今、日本の漁獲量が急激に減少しています。その原因は、乱獲と気候変動だといわれています。
スーパーなどでみる魚の値段が上がっています。魚の値上がりは、船の燃料費や輸送費の高騰だけが理由ではありません。
今、乱獲と気候変動の影響で、日本の近海で獲れる魚の量が減少しています。
今、日本の漁獲量が減っています
日本では昔から、水産業が盛んでした。
太平洋側には寒流(千島海流)と暖流(日本海流)がぶつかる場所があり、そこにプランクトンが豊富に集まることで、多くの魚が集まってきます。また九州の南にある東シナ海は、世界有数の漁場としても知られています。
しかし日本では、約30年前から魚の水揚げ量が減少しています。
約30年で漁獲量が3分の1になった
日本の漁獲量は第二次世界大戦後、漁場を拡大することで漁獲量を増加させてきました。
しかし1984年の1,160万トンをピークに、急激に減少しています。2018年には442万トンになり、1984年の約3分の1まで減少しました。
漁獲量の減少に加え、近年の原油高の影響により、スーパーに並ぶ魚の値段も高騰しています。
サンマ・スルメイカなどの漁獲量が極端に減少している
2022年1月に報告された全国さんま棒受網漁業協同組合の発表によると、2021年の全国さんま水揚げ総量は1万8291トン、前年比38%もの減少に。3年連続で過去最低の漁獲量となりました。
また、日本人に馴染みのあるスルメイカも漁獲量が急激に減少している水産物です。2000年以前は40〜60万トンほどの漁獲量がありましたが、その後は減少傾向にあります。そして2015年以降はさらに大きく減少し、2019年には約1.5万トンまで減少しています。
土用の丑の日でおなじみのウナギも、漁獲量が減少しています。日本で食べられているウナギは「ニホンウナギ」という絶滅危惧種に指定されているウナギです。そしてニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの漁獲量が、ここ数年減少しています。水産省の報告によると、1915〜1943年の漁獲量は平均3,000トンで安定していましたが、1970年以降に大幅に減少。2019年の漁獲量は過去最低の3.7トンになりました。
世界全体の漁獲量は増加している
日本で減少している漁獲量。世界ではどうなのでしょうか。
実は、世界全体でみると漁獲量は増加傾向にあるのです。世界中では、肉に代わるタンパク質として水産物への期待が高まっており、漁業に取り組む国が増えています。
2020年の天然の漁獲量は1990年と比べると14%増、養殖の生産高に関しては528%もの増加になりました。
漁獲量は、上から順番に中国、インドネシア、インド、ベトナム、ペルー、ロシア、米国、と続きます。かつては世界1位だった日本は、2020年時点では第8位となりました。
なぜ日本の漁獲量は減っているの?
ではなぜ、日本だけ漁獲量が減っているのでしょうか。
その原因は主に「乱獲」と「気候変動」によるものだといわれています。
乱獲によるもの
日本の漁獲量が減少している理由のひとつが「乱獲」です。
日本では戦後の食糧難の解決策のひとつとして、漁場の拡大が行われました。しかし当時は、持続可能な漁業を意識しておらず、稚児であっても構わず獲っていました。魚が獲れなくなったら、別の場所で獲れば良い、と考えていたのです。
そして2018年、70年ぶりに漁業法の改正が行われました。今回の改正には「水産資源の持続的な利用を確保する」という文が明記されています。
水産資源の適切な管理と有効的な活用を行えば、日本の漁獲量は増加できるでしょう。
気候変動によるもの
気候変動も、漁獲量が減っている一つの要因です。
気候変動の影響は地球温暖化だけではありません。気温が高くなると、海水温も上昇します。そして、海水温が上昇すると、取れる魚が変化します。
冷たい海水を好む魚は北上しますし、回遊ルートを変える魚もいるからです。また北上してきた高い水温を好む魚が居座ることで、今まで回遊していた魚と餌を取り合う場合もあります。
これらの原因により今まで獲れていた魚が獲れなくなってきているのです。サンマやサケの漁獲量の減少は、気候変動によるものが大きいといわれています。
MSC認証を受けた魚を買うことが持続可能な漁業につながる
魚の漁獲量の減少を抑えるためには、持続可能な漁業を行う必要があります。そのために私たちができるのは「MSC認証がつけられた水産物を買うこと」だといえます。
MSC認証とは、水産資源と環境に配慮し適切に管理された天然の水産物であることを示す認証です。「海のエコラベル」とも呼ばれており、世界中の400をこえる漁業がMSC認証を取得しています。
身近なところだと、イオンなどでMSC認証を受けた水産物が購入できます。また、レストランやファストフード店でも、MSC認証のついた魚や貝などを見つけることができます。
また漁業先進国では、稚魚や幼魚を獲らないようにしています。サイズによって漁獲の可否を決める場合もあるようです。
サステナブルな漁業と気候変動対策をすることが私たちが魚を食べ続けるために大切だといえるでしょう。
日々の生活で、CO2(二酸化炭素)の排出を抑えるエコな暮らしを実践して気候変動を緩和できたら、なおよいですね。
文:古賀瞳
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