猛暑、野菜の高値、感染症──気候変動を身近なところから考える

気候変動や地球温暖化は、私たち一人ひとりの生活にとって身近なものです。猛暑、野菜の高値、感染症、経済の停滞など、具体的な影響がすぐそこまで来ています。

海と緑と気候変動

今年は一足早い梅雨明け後に、連続した猛暑が日本を襲いました。夏バテや熱中症を経験した人もいるのではないでしょうか。

この猛暑は「気候変動」によるものと言われます。しかし気候変動と聞いても、地球規模の話なのでピンと来ない人も多いと思います。

今回は、気候変動と私たちの生活との関連性に着目して、身近な影響を見てみます。


気候変動とは?

そもそも気候変動とは、何なのでしょうか。

「気候変動」とは、大気中に温室効果ガスが増えて、地球上の平均気温が上がり、その結果として世界の気候が大きく乱れる現象です。「地球温暖化」とも言われます。

しかし、気候変動が引き起こすのは、気温上昇だけではありません。気温上昇の結果として、すでに海水面の上昇や熱波、森林火災、感染症の流行、食糧危機などが起こっています。


気候変動が私たちにもたらす影響とは?

気候変動が私たちに与える影響には、どのようなものがあるのでしょうか。最近のニュースや出来事から、考えてみます。


猛暑日が増える

東京では6月25日から9日間連続で、35℃を超える日が続きました。このような連続した猛暑日は、1875年以降初めてとされています。

7月1日にも、全国6カ所で40℃台を記録しました。2022年7月10日までの熱中症による救急搬送人数は3万人を超え、過去最多。このような猛暑は8月後半まで続くと予想されています。

猛暑の最大の要因は、気候変動です。このまま地球温暖化が進むと、2100年には東京の平均気温が4.4℃上昇、日本は亜熱帯化するとも言われています。

参考:環境省「2100年 未来の天気予報」


気候変動により野菜が不作、値段が高騰

今年の6月、玉ねぎの価格高騰のニュースを耳にしませんでしたか。徐々に価格は落ち着いてきていますが、例年よりは高いと言われています。

原因は、北海道での不作。雨の少なさと猛暑が影響しているようです。

野菜の収穫量は、天候に左右されます。例年にない猛暑や豪雨、大型台風による水害が起きると、生育障害が起きたり収穫量の減少、品質低下を引き起こします。その結果として、野菜の値段が上がります。

気候変動が悪化するほど、さまざまな野菜や豆、穀物の価格が高くなるでしょう。


感染症が流行する可能性がある

気候変動は、私たちの健康にも影響を与えます。

たとえば、感染症もそうです。豪雨や洪水が発生すると衛生環境が悪化し、コレラや下痢の流行につながります。

地球温暖化は生物の生態系を変化させます。なかでも蚊のような節足動物は適応が早く、その結果、大量発生し、病気を媒介します。蚊の体内にある病原体の成長も早まり、感染症拡大のリスクは高まります。

マラリアやデング熱は、今は熱帯地域で流行している感染症ですが、気温上昇により蚊の生息範囲が広まると感染範囲も広がるかもしれません。日本でも、今は耳にしない感染症が流行するかもしれません。


気候変動は経済にも影響をおよぼす

気温が上がると、冷房を付ける回数が増えます。近年の電気代高騰に加えて、使用量の増加で電気代はさらに上がるでしょう。

また日本銀行金融研究所は、気候変動は長期的な負の影響を世界全体に及ぼすとしています。短期的には経済活動の低下、物価上昇の可能性があります。長期的にみると、マクロ経済の生産性低下による、GDPの押し下げが予想されています。

参考:日本銀行金融研究所「気候変動の経済学 第5号」


「私たちにできることは何か」を考えてみる

気候変動の原因は、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出です。

どうやったら温室効果ガスを削減できるのかを考えてみませんか。生活のなかで電力の無駄遣いはないか確認したり、再生可能エネルギーに切り替えたりすることは、その手段のひとつです。

国や自治体に意思を伝えるために、環境問題に取り組む政党への投票やイベント、デモなどへの参加も良いですね。

また、気候変動の影響を研究した科学の成果は多くあります。科学の視点から自分で調べてみるのもおすすめです。

いよいよ身近なものとなってきた気候変動に、「なぜ?」「どうして?」と疑問を持つことが、気候変動対策への第一歩かもしれません。


文:古賀瞳


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