オーガニックってなんだろう?──環境や社会にやさしい選択

オーガニックは化学肥料や農薬を使わない栽培方法です。オーガニックの食品を選ぶことは、安全性の高さだけでなく、地球環境にもやさしい選択といえます。

オーガニックってなんだろう──環境や社会にやさしい選択

日本語で「有機」を意味する「オーガニック食品」。ここ数年で、オーガニック野菜やオーガニック原料などの表記を目にする機会が増えました。

環境省の調査によると、オーガニック食品を購入する日本人の85%以上が「オーガニック食品=安全性が高い」というイメージを持っています。今回、ご紹介したいのはオーガニック食品を選ぶことは、さらに地球にもやさしい選択肢だということです。


食における「オーガニック」は有機栽培のこと

有機農業推進法では、有機栽培(有機農業)を以下のように定義しています。

化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されている。

有機農業の推進に関する法律 第2条

つまり、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を使用していない点で、環境にやさしい栽培方法(農業)なのです。

有機栽培には、土づくりをはじめ、生産過程においてもルールがたくさんあります。

有機栽培では生産時に肥料が使われることがありますが、使用できるのは一部の許可されたものに限られます。肥料を使う場合、生産者は購入時に肥料の原料や製造過程などの情報を確認する必要があります。

このような手間がかかっているからこそ、消費者は安心して食べられるのです。


オーガニック食品が地球にやさしい理由

オーガニック食品が地球にやさしい理由

オーガニック食品は安全性が高く、私たちの健康に良いとされています。しかし、良い点はそれだけではありません。

オーガニックな農業は地球環境にもよい影響を与えてくれます。


気候変動の抑制につながる

たとえば、オーガニック食品を選ぶことは、気候変動の抑制につながります。

有機物を使った農地は、炭素を吸収します。たい肥や稲わらなどの有機物に含まれる炭素は、土壌に投入されることで微生物により分解されます。分解されると二酸化炭素が発生し、一部は大気中に放出されるものの、大部分は長い間、土壌に貯まり続けます。また、大気中に放出された二酸化炭素は、植物の光合成によって吸収されます。

イギリスで行われた調査によると、有機栽培は約20%の温室効果ガスを削減することがわかりました。これらの結果により、慣行農業よりも有機栽培は気候変動の抑制に効果があるといえます。

参考:環境保全型農業直接支払制度に関する第三者委員会(第11回、令和元年8月22日)資料より農業環境対策課取りまとめ


生物多様性を守ることができる

また、オーガニックな農業は生物多様性を守ることができます。

慣行農業で使用される農薬は、畑に住む生き物や微生物に悪影響を与えることがあります。さらに、畑に住んでいなくても、花粉を運ぶミツバチやトンボなど農作物の栽培に必要な生物にも効くことで、それらの生き物が減ってしまう可能性があります。

農薬や化学肥料を使用しないオーガニックな農業では、畑の生物多様性を守ることができるのです。

気候変動や生物多様性の破壊が進むと、土壌がおとろえ、農作物が育たなくなります。おとろえた土壌をなんとかしようと、さらに多くの化学肥料を使うことになり、悪循環に陥ってしまいます。

2050年には世界人口が100億人を突破すると予想されています。そうなると、今以上に農作物が必要になり、食料危機に陥る可能性があります。これは発展途上国だけでなく、日本でも起きうることです。


オーガニック食品の選び方

オーガニック食品の選び方

オーガニック食品を選ぶときは、

・認証ラベル
・生産者や製造過程

から選んでみるとよいでしょう。


認証ラベルから選ぶ

オーガニック食品を選ぶときは、認証ラベルがあるかを確認してみましょう。認証ラベルはさまざまな基準を満たしていることを証明します。

日本では「有機JAS」認証が有名です。

この認証ラベルは、JAS法(日本農林規格等に関する法律)に基づいた生産方法に関する規格であることを証明します。有機JASは農作物居合にも、加工食品や畜産物、飼料、藻類につけられます。

まちのスーパーでも、野菜やコーヒー、お茶などに「有機JAS」の緑のラベルが見つかります。

アメリカ版の有機JASが「USDAオーガニック認証」です。全成分の95%以上が有機栽培でつくられた原料である必要があります。世界でもっとも厳しい認証といわれています。

他にもEUのオーガニック認証ラベル「ユーロリーフ認証」やイタリアの「CCPB認証」、カナダの「COR認証」などがあります。輸入のオーガニック食品を選ぶ時は、生産国・製造国の認証ラベルを調べるとよいです。


生産者や製造過程から選ぶ

オーガニック食品を選ぶ際は、生産者や製造過程をみることもおすすめです。認証ラベルはオーガニックであることをわかりやすく証明しますが、すべての生産者や製造者が認証ラベルを取得しているわけではありません。

認証ラベルの取得には多くの費用と時間がかかります。そのため、オーガニックな農業を大事にしていても、認証の申請はしない生産者も多いのです。

メーカーのホームページで生産者や製造過程、原料などが調べられます。マルシェやショップで直接、作り手の方に話を聞いてみるのもとてもよいですね。


まとめ

オーガニック食品は地球や人にやさしい食品です。

日本でも徐々に広がっており、オーガニック食品だけを扱う専門店も増えています。しかしヨーロッパやアメリカ、中国に比べると、日本のオーガニック食品市場は小さいのが現状です。

オーガニック食品を広げるには、私たち消費者がその価値を理解し、選んでいくことが大切です。多くの人がオーガニックを選択することで、当たり前の選択肢の一つになっていくでしょう。

オーガニック食品のメリットや生産者さんの思いを理解し、無理のない範囲で選べると良いですね。


文:古賀瞳


こちらの記事もおすすめ