AFRICLのすべて──凛とした笑顔をつくるお洋服(沖田紘子さん)


──ベナンのバティックを作る伝統技術は、若い世代に伝わっているのでしょうか。

ベナンのバティック職人

全体に見ると、伝統生地を着ているひとが少ないかな、とは感じます。

日本の和装と近いかもしれません。

職人さんの高齢化や、若者があまりバティックのお洋服を着ないということもあります。

バティックのお洋服は輸入される衣料品や、アフリカ布として有名なプリント生地より値段が高い、という理由もあります。

ただ一方で、若手の職人を育成する工房ができたり、若者向けのバティックを使ったブランドも生まれたりしています。

私もいっしょに素敵な文化をつなぎ、発信するために歩んでいきたいです。


──ベナンの主産業として生産される綿は、どこで使われているのでしょうか。もしかして、国外に輸出されてしまっていますか。

ベナン産の綿は、95%が輸出されていると言われています。

綿を生地に織る産業が根づいていないのが現状です。なぜ、ベナンで紡績産業と工業的な織物産業が定着しないのか、これからも渡航しながら理解していきたいです。


──AFRICLの現状と課題をお聞かせください。

今年(2021年)のクラウドファンディングでは、AFRICLの最初の製品を出すことができました。

今のAFRICLは、ベナンの職人さんが染めた生地から日本の暮らしに馴染むもの、そしてときめくものを選び、買いつけています。

課題としては、バティックで染める前の生地がどこから来ているのか、トレースできないことがあります。また、染料も同じです。そこにも、ストーリーが見えるといいなと思っています。

* たとえば、綿花の原産地はどこの国のどの農園で、それが生地へと織り上げられたのはベナンの〇〇工場である、というようなトレーサビリティ(追跡できること)を確立したいということ。

染めるための生地は、できればベナンの綿から作りたいですし、少なくともアフリカ産の生地でありたいです。AFRICLとしては、やはりアフリカに利益を生みたいですし、自信を持って語れるプロダクトをご提供したいからです。

それから、バティックの染色の堅牢度を課題だと感じています。

AFRICLのお洋服が「一生モノ」として信頼していただけるように、長く着続けられる品質の管理をしたい。

また、たとえば赤ちゃんが噛んでも大丈夫であるような、安全性の担保をできる仕組みが必要だと思っています。

これからも「とっておかない、とっておき」のお洋服として、じゃんじゃん使える、シンプルでシルエットの綺麗なプロダクトを目指して、より多くの方に末永く、心地よく纏っていただくための工夫と改良を続けます。


──最後に、これからの展開について伺えますか。

新しい挑戦としてMANTEN(まんてん)という事業のスタートがあります。

お気に入りの一着が、何らかの理由で着づらくなってしまった、今の暮らしにそぐわなくなってしまったという方と、お直し・アップサイクル等を行うパートナーをおつなぎするサービスです。

ときめく一着をずっと「満点」の状態にして、いっしょに生きていく、そのための選択肢を作ります。

いくらお気に入りでも、ライフスタイルや体型は変わるものだから、です。

各地のパートナーとなってくださった縫製工場さんなどに、おつなぎする形をとり、お洋服を着続けられなくなった時、近所に頼れる場所があることを、知っていただこうと企画しました。

というのも、たくさんの方とお話をする中で、お気に入りの一着を手放した経験がある方があまりにも多かったからです。

その一着を「お直し」しなかった理由を伺うと、そもそも「思いつかなかった」「誰に頼んだらよいかわからない」「(値段が)いくらになるか不安だった」という理由が多かったです。

MANTENでは、そういったハードルを一つずつ下げたいです。

AFRICLが信頼するパートナーを通じて、

お気に入りの一着と、それが体型に合わなくなっても、ライフスタイルにそぐわなくなっても、壊れてしまっても、その時の「満点」の形に変えて、またいっしょに生きていけるようなサービスを目指します。

お洋服を永く使えるようなものづくりとサービスで「纏うモノは一生モノ」という文化をもう一度当たり前にしていきたいと思います。


AFRICL
IG:https://www.instagram.com/africlproducts/
HP:https://www.africl.com/
FB:https://www.facebook.com/africl.benineseandjapanese/

沖田紘子 プロフィール画像

沖田紘子 プロフィール

伝統生地を纏う、大人のアフリカ服ブランド AFRICL Founder

田舎の三姉妹の末っ子。大手生命保険会社を2020年末に退職し、アフリカ長期滞在経験無し、起業経験無し、アパレル経験無しでAFRICL立上げ。好きなことは、暮らすように旅すること。


取材/文:木村洋平
画像提供:AFRICL


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