ガーナに暮らす「おせっかい起業家」のにやにやがとまらない!(田口愛さん)

田口愛さんは、ICU(国際基督教大学)の学生でいま21歳。西アフリカの国ガーナと日本を行き来して暮らしています。チョコレートの原料となるカカオ豆の生産地ガーナで、初めてどの農家さんから豆が届いたのか分かるシステムを開発・導入した社会起業家です。

中央でチョコレートを作っているのが田口愛さん
田口愛さん(中央)

取材日:2019年12月3日

はじめに:「社会起業家としての田口愛さん」については、よい記事が他にもありますので、今回は自由に語ってもらいながら、そこに至る経歴と「ひととしての田口愛さん」に焦点を当てて取材しました。


木村(インタビュアー):──ガーナという土地の魅力について、伺えますか。

田口さん:自然が豊かです。農業もジャングルに種をまくだけ。食べ物は森に一杯あります。バナナ、パパイヤ、ココナッツ、パイナップル……。だけど、わたしにとっての魅力は、土地よりもそこに住むひとたちです。

はじめ首都からすこし離れた村を訪ねたときは、「かわいそうだな」と思いました。電気・ガス・水道がない。でも、村のひとたちは幸せそうでした。だから、「どんなときに幸せなの?」って聞きました。そうしたら「毎日だよ」って。

降り注ぐ光や雨、家族、あるものすべてに感謝するひとたちなんです。いっしょに過ごしていると、幸せを感じるセンサーが体中から生えてくる。世の中ってすばらしい!と思う。ガーナのひとたちは「自然と共存」している……でも、「共存」と言っちゃうとありきたりですね。彼らは「地球と遊んでいる」のかな。そして、自然に対して畏敬の念ももちろんもっています。

──今回はお話を伺えてうれしいです。取材やインタビューを受けるのは久しぶりだそうですね。

半年ほど、迷いがありました。それで、取材をお受けしていませんでした。メディアに対して、どうしても「社会的な課題があり……」「ガーナは貧しく」という話し方になってしまいます。社会起業家と見なされますし、こちらも期待に応えた受け答えをしてしまいます。だけど、「ガーナの村が貧しいから」といったことを、ガーナのひとたちの前でもわたしは同じように言えるだろうか?と考えました。言えません。それなら、そういう風に話したくないな、と。

わたしは心の底から彼らをかっこいいと思っています。彼らといる時間が、家族といるように幸せです。だから、ガーナのことを伝えずにはいられない。おせっかいでかかわっちゃうんです。

──おせっかい起業家、なんですね。

ほかのひとの幸せのため、というのもあるけれど、自分の幸せをまず考えています。

──起業について聞かせてください。

文化の発信は個人的にやっていることです(*注:日本とガーナの両方で、カカオ豆からチョコレートを作るワークショップを開催することなど)。それに対して、トレーサビリティを確立すること。これはビジネスです。世界で初めてカカオ豆のサプライチェーンを完全にIT化します。それによって、日本に輸入されたカカオ豆がどの農家さんによって作られたものか、わかるようにするんです。

*注:日本はカカオ輸入の約8割をガーナに頼っている。ガーナからは「カカオ生豆」が輸入される。これを日本でローストし、ミルで挽いて砂糖やミルクと混ぜることでチョコレートが完成する。田口さんが挑戦する事業は、生産から消費までの供給の流れをITによって透明化し、「誰がこのカカオを作ったのか?」を輸入業者や消費者も追跡できる状態にすること。
ちなみに、ガーナではカカオ豆は輸出用の換金作物である。そのため、現地の生産者はチョコレートを食べたことがなく、「チョコレート」という単語さえ知らないことが多い。田口さんは、現地でもチョコレートを作るワークショップを開催し、ガーナのひとに「あなたがたが収穫したカカオ豆から、こんなに素晴らしいチョコレートができる」ということを伝えている。

いまは、ガーナ政府が一律の値段で農家さんからカカオ豆を買い上げています。だから、農家さんは誇りや喜びをもてない。がんばってもがんばらなくても報酬はいっしょだからです。すると、手抜きも起こり、品質が一定にならず、日本のショコラティエさんも困る、といった状況があります。

ガーナでは、税金をとるために政府がカカオ貿易の窓口となり、一括管理しています。わたしは政府とも交渉しましたが、その点は動かせませんでした。だけど、QRコードを使ってトレーサビリティを確保することは、たとえ政府を通すとしても可能です。