みんなで美味しいものを楽しく食べる「ご飯」を中心とした自然な暮らし(中島デコさん)

農を中心としたコミュニティ「ブラウンズフィールド」の主宰をされている中島デコさんにサステナブルな日常生活とエシカルな人が集まるコミュニティ運営について伺いました。

中島デコさんインタビューその1

取材日:2021年7月30日

マクロビオティック(玄米菜食)料理家の中島デコさんは、千葉県いすみ市にある「ブラウンズフィールド」の主宰でもあります。

ブラウンズフィールドは農業を中心とし、イベントやスクールも開催しているオープンなコミュニティです。

「昔ながらの知恵を取り入れて、豊かな食を中心とした心地よい暮らしを提案する」をコンセプトに、カフェや宿泊施設も運営されています。

中島デコさんをはじめ、常時10人ほどのスタッフの方々が、ブラウンズフィールドで自然に寄り添い、自給自足の生活をしています。

今回はとことんエシカルな生活をするとどうなるかを探るため、中島デコさんの日常生活や、コミュニティ作りについてお話を伺いました。


ブラウンズフィールドの1日

ブラウンズフィールド外観
ブラウンズフィールドは緑に囲まれそよ風が吹く心地よい空間洗濯ものさえ気持ちよさそう奥に見えるのがライステラスカフェ


──インタビュアー(飯田):ブラウンズフィールドでのみなさんの1日の過ごし方を教えてください。


中島デコさん:私は、できるだけ朝早く起きて、お庭でヨガや瞑想をするようにしています。自然からエネルギーをいただけるとても大事な時間です。

7時半からは、みんな揃ってお掃除をしたり、洗濯をしたり、朝ご飯を作ったり、ヤギを外に出したりと、朝の仕事をします。一人の主婦が午前中かかる仕事を30分でこなせるのが共同生活の魅力です。

朝ご飯は、自家製玄米のお粥と、自家製お味噌とお野菜で作るお味噌汁。自家製梅干しに糠漬け。そんな風に毎日身体と心を整えるシンプルかつ自給率の高いメニューです。

9時からお昼までは宿泊、カフェ、畑仕事などに分かれて午前中の仕事をします。私は、体力に合わせて楽しそうなところにジョイン(笑)。 

お昼は、畑のものや冷蔵庫、カフェで残った食材を駆使して作る。まさに「あるもんできっちん」!!お野菜はなるべく皮まで使う。ドレッシングの残りまで次に回して使い切ります。

ウチのカフェは「廃棄ゼロ!」です。売り切れたら売り切れたで嬉しい。残ったらみんなで食べきる。

そしてさらにたくさん残ったらご近所さんに声がけしたり……と、とにかく無駄なく感謝して食材を活かしきるように心がけています。

午後もそれぞれの持ち場の仕事をして、夜ご飯は19時頃にみんなでいただき、あとは自由時間です。 


*「あるもんできっちん」はデコさんが開催しているお料理教室。「シンプルかつもったいなくない料理」をコンセプトにしています。


「ご飯」が一番大事なもの

ブラウンズフィールドで収穫された野菜をふんだんに使った玄米菜食ランチプレート
ブラウンズフィールドで収穫された野菜をふんだんに使った玄米菜食ランチプレート

手作りした「ご飯」を中心に生活する。家族や仲間と一緒に美味しくご飯をいただくということは、本当に大事だなって思います。

ここで数日過ごすお客さんや、「丸ごと体験」の方の表情が驚くほど変わって緩んで楽しそうに帰って行くのを何度となく見ると、食と環境って(実は食=環境!)がヒトに及ぼす影響の凄さを実感します。


───「ご飯」が中心なんですね。マクロビオティック料理専門家としてもこれまでたくさんのお料理を食べてこられたと思いますが、デコさんにとってのご馳走って何ですか?

本当に美味しく炊けた時の玄米は死ぬほど美味しいし、断食後の味噌汁は細胞に染み入るし、なんだかやっぱり玄米と味噌汁に戻りますね。 いくら工夫をこらして切ったり貼ったりしたところでシンプルに勝るものはありません。


* ライステラスカフェで提供しているランチプレートでもブラウンズフィールドで収穫された玄米を楽しんでいただけます。また、ブラウンズフィールドでは醤油や柿酢、味噌や塩麹などの調味料も自分たちで作ったものを使っています。

​​

生活の一つ一つの場面で、立ち止まって考える

中島デコさん2枚目


──サステナブルな生活を送る上で大切にしている考えはありますか?


「何か物事を決める」とか「何か買う」とか「何かする」とかいう時に「自分とみんなと地球にとって大丈夫かな?」っていつも考えます。「ちゃんと三方よしじゃないとだめじゃない?」って思っています。

「自分だけ(よければよい)」っていうのも「相手だけに尽くす」っていうのもちょっとちがう。

自分も楽しくなきゃいけないし、だからって人間だけよくても地球に毒を撒き散らしたらそれは持続可能なことじゃないですよね。その3つとも大丈夫かなって、みんなちゃんと考えてから決めようねと言っています。

たとえば、「この洋服はどうやってどこで誰が作ってきたのか」「これがゴミになった時はどこでどういう風になるのか」「本当に最後は土になるの?」という感じでとにかく考える。

100%のサステナブルはできなくても、考える。一応考えてみることが大事。

難しいことだけどいつも一度立ち止まりたいなって思う。そういうふうにものを決めていきたいなって思います。


エシカルなひとが集まるコミュニティ運営

共同スペースにいるやぎ
<br>

──現在スタッフの方々と共同生活をしてらっしゃいます。現代では、都会でも田舎でもこのように距離感の近い共同生活をしている人が少なく、簡単なことではないと思いますが、そうした暮らし方に最初から抵抗はなかったですか?


ありましたね(笑)。

私は、もともとワンオペで子供5人を育てる主婦だったのでとにかく大変でした。

* 中島デコさんは、千葉県のブラウンズフィールドを作る前、都内で暮らしていた。 


 最初、外からの人を受け入れる事になった時「人が増えたらその人に食べさせるのも大変!」って思ってたのですが、やってみたら、食事作り、洗濯、掃除等々みんなで手分けすれば楽で楽しい!ってことに気づいて(笑)。

そこから後戻りできずにいます(笑)。 


助け合えること、アップダウンがあること


──なるほど。助け合いができるのは共同生活の大きなメリットですよね。東京から千葉に生活拠点を変えてから共同生活を始められたんですよね。共同生活って難しいこともありますよね。


一緒に住んでると、みんなそれぞれ生い立ちも違うし、アップダウンもあるし、体調を崩す事もあるので、いい顔だけは見せられない。

もちろん言い合いになったりする事もある。でも、それも醍醐味かな。乗り越えると、さらに仲良くなるし、みんなそれぞれサポートしあって、まさにに同じ釜の飯を食う家族みたいになっていきます。そこが面白いです。


みんなでミーティングをすることの大切さ

毎年恒例の夏祭りの様子
毎年恒例の夏祭りの様子


──そのような共同生活の中、どのようなことを意識してコミュニティを運営しているのでしょうか?

私はトップダウンみたいなやり方が無理だから、そうじゃなくて、みんなでミーティングでこうしたいああしたいと、その時々のメンバーで話し合って柔軟に変化してきました。

ミーティングは月に2回ほどしていて、イベントがある時はそれ用のミーティングをしています。

いっぱい人数がいると報告と連絡で終わってしまうことが多くて、日常の不満までを吸い上げるのは難しいことが多いです。みんなの前で不満を言えるわけでもない人が多いし。

そういう空気作りとか場作りって難しいですよね。そういう場作りも、私の役割なんだろうなと思うんですけどね。

長い人だと3年弱ブラウンズフィールドで過ごしてくれる人もいます。

大事な時期を3年間ここに預けてくれるのは本当にありがたいことです。できれば本当にその人にとっていろんな学びや出会いがある環境になったらいいなって思っています。


日本で古くから大切にされてきた大家族的な暮らし

ライステラスカフェの様子
ライステラスカフェの様子


──色々な方が出入りする中でその時にあったコミュニティ作りをみなさんでしているんですね。今日カフェにお邪魔させていただいてスタッフのみなさんの素敵な雰囲気を感じとることができました。


基本、日本人には共同生活が気質としてあってると思います。 空気が読めるし、思いやりがあるし、やるべきことはきちんとやるっていう人、多いと思うんです。 

私は、昔の日本の大家族のあり方が好きです。力のある若い人が外で畑仕事して、お年寄りが孫を見ながら豆をよって(選って)、さらに、ちょっと変わった出戻りのおじさんやおばさんがいるみたいな……(笑)。

日本人だからこそ大家族的な暮らしができるの かなって思ったりしますね。 

でも、実は、海外でもうまくいっているコミュニティをいくつも知っていて、一緒に生活したことがあります。どこも、農の暮らしを中心にしていて基本がヴィーガンやマクロビオティックでした。

まぁ、私がそういうところにしか行かなかったという理由もありますが……。


──最後にみなさんに一言お願いいたします。


興味を持った方、ぜひベジタリアン、健康と環境、コミュニティあたりを深堀りしてみてくださいね。なんでも「100%」や「絶対」はないと思いますが、そのあたりに、今後世界がサステナブルに続いていくヒントがあると、私は確信しています。

今日はいらしてくださり、ありがとうございました。みなさんも是非、ライステラスカフェにいらしてくださいね。慈慈の邸(ジジノイエ)やコテージのご宿泊、「丸ごと体験」でもお待ちしております。

ここへ来て、たくさんの木々や草、空気、星や月や太陽など自然の力や、調味料を種から育てて作る美味しいご飯のエネルギーをチャージして、さらに元気になっていただけたら嬉しいです。


公式サイト:https://brownsfield-jp.com/
公式IG:https://www.instagram.com/browns_field/


取材/文:飯田千聖
写真:深津知由


こちらの記事もおすすめ


エシカルSTORYホーム