「エシカル」という言葉は、1990年頃にイギリスではじまった「エシカル消費」に由来します。その後、エシカルは買い物だけでなく、生活全般に意味が広がりました。今ではサステナビリティやSDGsと同じように、自然環境や人権、企業のあり方や仕事の革新、お金の循環や地域の支え合いまでふくみます。

「エシカル」という言葉を聞いたことがありますか?
「倫理的」「エシカル消費」「地球にやさしいライフスタイル」など、エシカルにはいろいろな説明があります。どれも正しいのですが、ばくぜんとしてしまうかもしれません。
エシカルとは?
エシカルSTORY(このサイト。私たちのメディア)では、エシカルをこう説明しています。
エシカルとは、社会や公共のこと(≒サステナビリティ)にかかわって、自分らしく行動することです。たとえば仕事や活動、生活の工夫、 日々のコミュニケーション、学習や発信、寄付、クラウドファンディングなどにより「ひと、環境、社会、地域、文化を大切にする」ことです。
私たちのストーリーより
エシカルSTORYの自己紹介ページである「私たちのストーリー」から引用しました。
ただし、この説明はちょっと独自性が強い(「公共のこと」「自分らしく」など)と思います。一般的な説明なら、エシカルとは「ひと、環境、社会、地域、文化を大切にするライフスタイルと仕事のこと」でしょうか。
エシカルに注目が集まる
「エシカル」はこの10年くらい、日本でも注目されています。

* 「エシカル」が日本国内のGoogleで検索された回数の変化。最高値を100として%で表示。2015年6月〜2025年6月まで。Googleトレンドより。
消費者庁の調査によると、2016年から2020年の間に「エシカル(消費)」という言葉の認知は上がり、また、エシカルを「これからの時代に必要だ」と考える人も大きく増えました。
エシカルのかんたんな歴史
「エシカル」という言葉は、1990年頃にイギリスではじまった「エシカル消費」に由来します。エシカル消費=ethical consumption はよりよい買い物をしようという「買い物運動」です。「ただ安くて便利ならいい」ではなく、生産から販売まで、社会・環境・働く人にとって無理がないように工夫された商品を買おうとする運動のことです。
これが日本にも入ってきて、「エシカル(消費)」と言われるようになります。さらに消費(買い物)にかぎらず、ライフスタイルのあり方として生活全般に意味が広がりました。
「エシカル」は、エコ(自然にやさしい)やロハス(健康や環境によいライフスタイル)、オーガニック(有機栽培の食材)、フェアトレード(公正な貿易と商売)といった言葉と結びついていきます。「ていねいな暮らし」も近い言葉でしょう。
ちなみに、「ロハス」という言葉は2000年代の前半にトレンドになりました。

*「ロハス」が日本国内のGoogleで検索された回数の変化。最高値を100として%で表示。2004年1月〜2025年6月まで。Googleトレンドより。
その後、2010年代から、日本でもサステナビリティやSDGsが、教育やビジネスの中で広がると、エシカルも「サステナビリティ」や「SDGs」と同じような意味になっていきます。それにより、「エシカルな」と言われる範囲がぐっと広がりました。

*「サステナビリティ」が日本国内のGoogleで検索された回数の変化。最高値を100として%で表示。2015年6月〜2025年6月まで。Googleトレンドより。
今では、「エシカル」はサステナビリティやSDGsと同じように、自然環境や人権、企業のあり方や仕事の革新(起業、イノベーション、DX、GXなど)、原材料の調達、お金やものの循環、地域の支え合いやコミュニティ作りまでふくむポジティブな概念になっています。
キーワードでいうと、気候変動、脱炭素、生物多様性、再生エネルギー(太陽光、風力)、断熱(窓や壁)、ファッション産業、スロー、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)、ゴミ、ビーチクリーン(清掃活動)、海洋プラスチック、分別、リサイクル、アップサイクル、リペア(修理)、ヴィーガン(ビーガン)、アニマルライツ(動物愛護、動物の権利)、ジェンダー平等、多様性、DEI、障がい、インクルージョン(包摂)、バリアフリー、ユニバーサルデザイン、ESG投資、インパクト、ソーシャルグッド、ガバナンス(企業統治)、社会的起業などがあげられます。
エシカルな行動
このように範囲が広がったとはいえ、特に「エシカル」という時には、日々のアクションを指すことが多くあります。エシカルはひとりひとりの消費者、生活者の目線に立っているからです。
それは「サステナビリティ」という言葉がどちらかというと「トップダウン」のニュアンスをもち、政府や官庁、大きな企業や金融機関になじみやすいのと逆かもしれません。
(もっとも、「エシカルな企業」「エシカルな金融」といった言い方があるので、エシカルが日々のアクションや小さなことがらに限定されるわけではまったくありません。)
そういったエシカルな行動(アクション)といえば、
- 水筒(マイボトル)を持つ
- 自分のコップ(マイカップ、マイタンブラー)やカトラリーを持つ
- 食べ残し(フードロス)を減らす
- マイバッグ(エコバッグ)を持つ
- 省エネの照明や家電を使う
- 地域のものを買う(地産地消、地産地食)
- フェアトレード商品を買う
- 地域のコミュニティやイベントに参加する
などがあります。
こういうエシカルな行動を続けると、エシカルやサステナビリティに実感がわきます。エシカルやサステナビリティを楽しく学べますし、日々の生活から自分の住む地域、国、世界への広がりを感じられるようになります。
たとえば、フェアトレードのチョコレートを買うと、原材料のカカオが西アフリカのガーナで採れており、そこには児童労働という問題があることに気づいたりします。ほかにも、安い洋服(ファストファッション)は環境や労働者への負荷が高いけれど、手作りに近い服を買えば、それが国内の手仕事や文化を守り、はぐくめることに気づいたりもします。
まとめ
エシカルは、1990年頃のイギリスで「エシカル消費」という買い物運動としてはじまりました。今ではエシカルやサステナビリティ、SDGs、ESGといった言葉の意味はおたがいに近づいています。
エシカルもサステナビリティも、「地球全体のバランスを考えて、平和に発展していく。そのために社会や文化の新しいカタチをつくること」とまとめられるでしょう。
日々のエシカルは気持ちのうえでも生活を豊かにし、発見や生活の知恵をもたらしてくれます。
参考
エシカル協会…末吉里花さんらが創設。エシカル・コンシェルジュ講座を開催しています。
消費者庁…2015年にエシカル消費の研究会ができ、今はエシカル消費の特設ページもあります。
『はじめてのエシカル──人、自然、未来にやさしい暮らしかた』末吉里花、山川出版社、2016
また雑誌では、講談社のFRaU(フラウ)がおすすめです。
(FRaU webもあります。)

以下、エシカルSTORYの記事から4つ、参考に!
エシカルとは感じること 2022年9月の記事
2024年に向けて「エシカルの今」を知る(前編) 2023年12月の記事
2024年に向けて「エシカルの今」を知る(後編) 2024年1月の記事
気候変動イニシアティブの活動 〜日本の企業、金融機関らが協力する〜(気候変動イニシアティブ 共同代表 セルジオ加藤さん) 2025年3月の記事
参考2
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