半農半Xって? 環境にも自分にもエシカルな生き方

農的暮らしとやりたい仕事を両立させる「半農半X」は、エシカルな生き方のモデルの一つといえます。


「半農半X」。

サステナビリティやエシカル、地方移住といった話題に関心がある方は、この言葉を聞いたことがあるかもしれません。

近年、自治体の農業や移住政策にも「半農半X」が用いられ、さらにコロナ禍などの社会状況の変化によってあらためて注目されるようになってきました。

半農半Xは、環境に優しく、自分にとっても無理なく豊かな暮らしを志す点で、エシカルな生き方と言えると思います。

この記事では、エシカルな生き方のモデルの一つといえる「半農半X」について、ご紹介していきたいと思います。


半農半Xってどんなライフスタイル?

半農半Xってどんなライフスタイル?

半農半Xとは、半自給的な農業(=半農)をしながら、自分のやりたい仕事をする(=X)ライフスタイルを指します。

この言葉は、京都府綾部市出身の塩見直樹氏が1990年代に提唱した言葉です。

塩見氏は著書半農半Xという生き方【決定版】の中で、半農半Xを「小さな農業で食べる分だけの食を得て、ほんとうに必要なものだけを満たす小さな暮らしをし、大好きなこと、やりたいこと、なすべきことをして積極的に社会にかかわっていくこと(※注1)」と説明しています。

「X」の部分には、さまざまな言葉が入ります。

例えば、お店で使う野菜を作りながらカフェを経営する人であれば「半農半カフェ」、ライターとして活動しながら野菜を育てている人なら「半農半ライター」になります。

※注1 塩見直紀半農半Xという生き方【決定版】筑摩書房(2014)、19頁


柔軟でエシカルな「半農半X」

柔軟でエシカルな「半農半X」

半農半Xという概念には、次の二つのポイントがあります。

ひとつは「農業をする時間や規模に基準はない」という点です。

農作業に充てる時間や作る面積は自分に合ったもので構いません。朝晩だけの畑作業や、ベランダでのプランター栽培、市民農園を借りる形でもよいです。

ふたつめは「Xには何が入っても自由」という点です。

Xは自分の生きがいやライフワーク、大好きなこと、得意なことを指します。フルタイムの仕事でもよいし、ボランティア活動でもよいです。会社勤めでも、自営や起業でも問題ありません。また、Xを複数持つこともできます。

重要なのは、環境に配慮した暮らしをしながら、個人の個性や長所、特技を生かした仕事や活動をし、物質的な豊かさだけでなく精神的な豊かさも大切にするということです。

「農」「X」の部分はとても柔軟で、自分に合わせた形で取り入れやすい半農半Xという生き方。環境を意識しながら、自身が無理なく豊かな暮らしを目指す点で、エシカルな生き方と言えるでしょう。


変化する社会における「半農半X」

政府の働き方改革やコロナ禍の影響で、リモートワークの普及や地方への移住など、働き方・暮らし方の多様化が進む現在。半農半Xも時代のニーズに合った生き方の一つとして、あらためて広がりを見せるようになってきました。

たとえば、愛知県や島根県など、移住・定住や就農を促進するために、半農半Xに興味がある方を意識した情報発信を行う都道府県や自治体が出てきています。

あいちdeニューノーマルな選択肢、半農半Xな暮らしガイド‐買うからつくるへ‐

しまね就農支援サイト

さらに、「半官半X」「半林半X」など、半農半Xの考え方から派生した言葉も登場しました。

これらの動きは、様々な働き方や暮らし方が可能になる中で、半農半Xという柔軟なコンセプトが多くの人に受け入れられたことを示していると思われます。


まとめ

まとめ:半農半Xって?環境にも自分にもエシカルな生き方

20数年前に登場した、環境にも自分にもエシカルな半農半Xという生き方。いま、社会の新しい潮流の中であらためて注目され、その価値が見直されていると思います。

もし、自分の働き方や暮らし方を見つめてみたい、環境に配慮しつつ自分も心地よい暮らしをかなえたい、といった思いがあれば、半農半Xはその一つのヒントになるかもしれません。


参考文献
塩見直紀(2014)半農半Xという生き方【決定版】筑摩書房
「移住と「農」で人生は変わる⁉ 半農半Xという生き方を求めて」,『Soil mag. Vol.1』(ONE PUBLISHING MOOK)2021年, p.24-27, ワン・パブリッシング


文:有馬里実


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