家族単位で孤立しやすい「ひきこもり」の現在

今、日本のひきこもりは全年代に広がり、とくに長期化と高齢化が社会課題になっています。

橋を歩くひとの足

日本でひきこもりになっている人は現在、100万人以上います。ひきこもりは若年層の問題だと思われがちですが、実際は40歳以上が半数以上を占めます。


「ひきこもり」は若者だけでなく全年代に広まっている

一般的に、ひきこもりは「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて社会参加をしていない状態」だと定義されます。

* 定義はひとつではありません。

最初に述べておきますが、「ひきこもり」そのものが悪いわけではなく、ひきこもることがすぐ「社会課題」になるわけでもありません。

たとえば、思想家・詩人の吉本隆明は「ひきこもってまとまった時間を持つことは大切だ。もし、私が分断された時間しか持てなければ、何者にもなれないだろう」という趣旨の発言をしています。

他方で、ひきこもりが当事者や周りの家族につらい思いを強いる場面も多々あります。その場合は、解消する方向を探ることも大切です。


ひきこもりは男性が多い?

さまざまな調査をみると、男女比の割合は男性が6〜7割を占めています。しかし、ひきこもり状態にある女性は、もっと多いと考えられています。

女性のひきこもりが調査人数より多いと考えられるのは、調査対象から除外されてしまうことがあるからです。内閣府が実施する調査では、以下に該当する人は調査対象としていません。

  • 就労状況に「専業主婦・主夫」または「家事手伝い」を選んだ人
  • 普段家でしていることに「家事」「育児」「介護・看護」を選択した人

このため、家事や育児をしているものの、家族以外の人とは誰とも話せず、孤立した女性が引きこもりとカウントされないことが起きます。


ひきこもりの6割以上が40歳以上

「ひきこもり」に対して、若者に多いという印象をお持ちの方は多いのではないでしょうか? 実際、かつては「不登校」=「ひきこもり」のイメージがメディアでも強く表現されました。

しかし、内閣府による2016年度の調査では15〜39歳のひきこもり人口は54万1,000人。他方、2018年度の調査では、40〜64歳のひきこもりは61万3,000人で、全国の満40〜満64歳の1.45%がひきこもり状態にあると報告されています。

このように、若者よりも中高齢者のひきこもりが多いのが現状です。

そして、ひきこもりの高齢化が問題視されるようになって出てきたのが「8050 問題」です。

「8050 問題」とは、80代の親が50代の子どもを支える家庭状況のことです。若年層からのひきこもりが解決されず長期化、高齢化が進んだために起きていると考えられています。


40歳以降にひきこもりになった人は6割近い

ひきこもりになった年齢は人によりさまざまですが、40歳以降に初めて引きこもりになった人は57.4%と報告されています(2018年度)。

また、年齢と同じく、ひきこもりになった原因も人により異なります。きっかけがわからないケースも多いですが、以下のような要因がよく挙げられます。

シニア層:職場での人間関係、退職など

若年層:友達からのいじめ、教師のハラスメントなど

どのような理由であれ、トラブルが起きる前の予防と、起きた後のケアをしっかりすることが重要です。


7年以上ひきこもりの状態にある人が半数以上

また、ひきこもりの長期化も問題となっています。

内閣府が2015年に行った調査によると、7年以上ひきこもりの状態にある人は全体の半数以上を占めました(「無回答」を除く)。

ひきこもりが一定期間以上続くと「ひきこもりの悪循環」に陥ってしまいます。「ひきこもりの悪循環」とは、ひきこもり状態から脱出しづらくなる構造です。

通常、個人・家族・社会はそれぞれ接点を持っており、コミュニケーションをしながらお互いに影響し合います。

しかし、ひきこもりが長期化するとそうした接点を失いやすくなり、当事者も家族も孤立しやすくなります。そんな時、家族が当事者にストレスをぶつけたり叱咤激励してしまうことで、社会復帰へのモチベーションが下がることもよく起きます。

これが「ひきこもりの悪循環」です。当事者も家族も、接点を持ちたい時に持てる環境が大切です。


ひきこもりにより「家族単位」で孤立する

日本では、ひきこもりが原因で「家族単位」で孤立していると言われています。これは日本だけでなく、家族のつながりが強い国で多く見られます。

家族間(両親同士など)で相談し合っていても「近所や親戚に、家族のひきこもりを知られたくない」「相談できる人がいない」という理由から、誰にも話していない場合も多いと言われます。

すると、外からは見えない問題を抱え込んだまま、家族全体が社会から孤立してしまいます。


悩んでいる方へ。相談できる窓口を一覧にしました

もし「ひきこもり」で悩んでいるなら、一度相談してみてください。

ひきこもり状態にあるご本人だけでなく、ご家族の相談も聞いてくれます。


▶ 地域若者サポートステーション

「今までいろいろあって、就活に踏み出せない」

「自信がなくて、就職できない」

このような悩みをお持ちの方はぜひ。

こちらから、お住まいの地域の若者サポートステーションを調べることができます。「サポステ」は全国にあります。活動歴の長い地域の団体が担当していることも多いです。今は、15歳〜49歳の相談を受け付けています。

公式HP:地域若者サポートステーション


▶︎ あなたのいばしょ

24時間365日、年齢や性別を問わず、どなたでも無料・匿名で利用できる「あなたのいばしょチャット相談」。最短5秒で、国内外の「いばしょカウンセラー」が相談にのってくれます。

「誰も頼れる人がいない」という方に寄り添ってくれます。

チャット相談:あなたのいばしょ


▶︎ NPO法人 楽の会リーラ

ひきこもり状態から脱出や社会参加の実現をサポートする「NPO法人 楽の会リーラ」。

電話での相談が可能です。

「親の学習会」「親父の会」「女子カフェ」なども開催されています。

公式HP:NPO法人 楽の会リーラ


まとめ

冒頭に述べたように、ひきこもりは悪いことではありません。「人生の休養期間」とも言えます。

しかし、「ひきこもり」について、偏見を持っている人、恥じている人は多いですし、長引くと本人や家族がつらくなるケースが多いことは見てきた通りです。

ですから、ひきこもりの長期化や高齢化に対しては課題意識を持って、社会全体で取り組みを考えることが重要です。

ひきこもりの状態にある方やその身近な方々は、孤立して悩みを抱え込まずに、ぜひ外部に相談してみてください。


文:古賀瞳


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