エシカル、サステナブル、SDGs、ESG、CSR:共通点とちがいがわかる用語解説

「エシカル」「サステナブル(サステナビリティ)」「SDGs」「ESG」「CSR(とCSV)」について一つずつ解説します。これらの言葉の「共通点」と「ちがい」が浮かび上がるように工夫しています。

鳥の人形が辞書を読んでいる


エシカルとは?

エシカルとは、「よりよく生きようとすること」です。もともとの意味は「倫理」です。

実際の使われ方としては、「サステナブル」と同じ意味として、「エシカルな企業」≒「サステナブルな企業」「エシカルファッション」≒「サステナブルファッション」などと言われます。

他方で、サステナビリティがとくに「環境や社会の限界が、いつどの時点で、どのように起こるか?」(データ・ファクト・エビデンス)という点を重視するのに対して、エシカルは「そもそも他者の犠牲や自然破壊のうえに、先進国でのみかろうじて成り立っている”繁栄”っておかしいよね?」(倫理的な態度)と考えること、と言ってもよいでしょう。

そこから、新しい社会や自然との共生について思いをめぐらせ、実際に行動することもできます。つまり、「エシカル」は「サステナブル」や「SDGs」よりも、みずからの生き方を問う言葉なのです。


サステナブル、サステナビリティとは?

サステナブル、サステナビリティとは、「持続可能」という意味です。

しかし、この「持続」という言葉は「なにを持続させるのか?」と改めて問われると、実ははっきりしません。サステナビリティに大変、先進的な企業の広報部長でも、答えられないことがあります(筆者はあるカンファレンスで質問しました)。

あえて言えば、「地球環境、人類の生存、安全を守る国際秩序、健全な地域社会」などの「持続」でしょうか。

結局、サステナビリティとは「みんながわりあい平等に幸福になれる社会を作ろう。地球の自然環境を大切にしよう」という意味だと捉えてよいと思います。

では、具体的に「どういう分野で、どういうことをするのが、サステナビリティなのか?」と気になるかもしれません。それはSDGsを見ると、少しずつわかってきます。いずれにせよ、「サステナビリティ」は非常に包括的な話で、また速いスピードで知識・技術・行動規範も変わっていくので、全体像を見て取るのはとても難しそうです。

逆に言えば、自分のかかわる事業や仕事、生活において、「地球環境と社会を保てるように」行動していれば、それで十分に「サステナブル」と呼んでよいのでしょう。

* なお、筆者は「サステナビリティをある程度、一般的に定義できるような、サステナビリティの哲学が必要ではないか」と感じています。それがないと中長期的には世界で合意がとれずに、サステナビリティの動きがばらばらになっていくのではないかと懸念しています。


SDGsとは?

SDGsとは、”Sustainable Development Goals”(持続可能な発展の目標)です。経済成長一直線という目標ではなく、どのような目標を2030年に置いたら、まともな社会が築けるかを国連で議論して、2015年に定められた「多様で具体的な目標の集まり」を指しています。


ESGとは?

ESGとは、”Environment, Social, Governance”の略です。訳せば、「環境、社会、ガバナンス(企業統治)」となります。

「それはサステナビリティやエシカルとどうちがうの?」

と思われるかもしれませんが、ほぼ「サステナビリティと同じ」と考えてよいでしょう。

ただし、ESGは「投資」にとくに注目します。「ESG経営」だけでなく、「ESG投資」という言葉がよく使われます(世界でもそうです)。「ESGと言えば、投資がメイントピックになりやすい」また「ESGは、企業の事業や政府の政策だけでなく、世界のお金の流れ全体を考えるもの」と捉えてよいかと思います。

もう一つ、日本で「サステナビリティ」という言葉よりも「ESG」が好まれる面があるとすれば、ESGが「ガバナンス(企業統治)」を組み込んでいるから、という理由もあるでしょう。その点、企業としては「自分ごと」と感じやすいのかもしれません。


CSR(とCSV)とは?

CSRとは、企業の社会貢献のことです。”Corporate Social Responsibility”の略で、訳せば「企業の社会的責任」となります。この項目は、筆者の感じ方がだいぶ反映されていますが、以下、ご了承ください。

CSRは、あえてサステナビリティと対照させて言えば、「社会に対して、このくらいはよいことしておかないとまずいし、その方が見栄えもよい」と考えて「プラスα」でやる社会貢献のイメージです。

日本の企業において「CSR」という言葉は、サステナビリティやエシカルよりも歴史があり、ミレニアル世代(現在20代後半〜30代半ばの世代)より上では馴染みのある言葉になっています。

また、CSV(共創価値)という言葉もCSRに近い意味で使われます。このあたりは、ちょっとややこしいです。では、どう考えればよいでしょうか。

重要なポイントは、日本において、

「CSR≒CSV≒プラスαでやる社会貢献」
「ESG≒サステナビリティ≒事業や投資そのもののあり方を変えること」

というちがいを押さえることです。

つまり、環境や社会に対する「取り組み」をプラスαでやるのか(CSR、CSV)、それとも、環境や社会のなかで持続可能な事業を本体として作り出していくのか(サステナビリティ、SDGs)、というちがいです。

実際に上のように言い切ってよいかは難しいところです。たしかに、今の日本ではCSRとサステナビリティを分けず、「CSRはサステナビリティと同じようなもの」という認識もあります。

それは、もともと企業に「CSR部門/CSR担当」があるなどして、日本ではCSRという言葉がずっと根付いていたところに、急に「サステナビリティ」や「SDGs」が入ってきたから、という事情によるのでしょう。それで接ぎ木をするように、これらをくっつけてしまったのです。

しかし、CSRは、事業の本体のあり方を問うものではなかったことから、サステナビリティと区別した方がよいのではないか、と筆者は考えています。いずれは現在のCSRにかかわる部署は、「サステナビリティ推進課」「サステナビリティ担当課」などに変わっていくのではないでしょうか。


以上、少しうがった見方で各用語を解説しました。ただ定義だけを並べても頭に入らないと考え、背景とニュアンスのちがいが際立つように交通整理を試みました。ご参考になれば幸いです。


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文:木村洋平


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