余った食べ物を、食べ物に困っている人たちに届けるフードバンクという活動をご存じでしょうか。フードバンクを初めて知る人にも伝わるように紹介します。
フードバンクとは?
まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物を、食べ物に困っている人や福祉施設に届ける活動のことです。
フードロス問題について
平成29年度の調査では、日本で年間約612万トンもの食料が廃棄されていたことがわかりました。これは、国民1人当たりに換算すると、毎日お茶碗1杯分の食料を捨てていることになります。
廃棄される食材で代表的なものは、キズがついていたり曲がっていたりするために規格外になってしまった野菜や、サイズが小さかったり漁獲量が少ないために市場に出せない未利用魚などがあげられます。これらの食材は、味や品質には問題がなくふだん私たちが食べているものと同じように食べることができるのにもかかわらず廃棄されてしまっています。
また、飲食店やスーパーなどで売れ残ってしまい廃棄されてしまう食料も大量にあります。
なお、「食品ロス」について詳しくはこちらの記事を併せてご覧ください。
フードロス問題の解決にもなるのがフードバンク!
多くの食品が廃棄されている現状を解決するために生まれた活動がフードバンクです。
フードバンクの活動を行っている団体は、農林水産省が活動を把握している数だけでも全国に136団体あります。
フードバンクの仕組み
フードバンクの仕組みは、まずスーパーや食品製造業者などの企業、農家、個人などがフードバンクに廃棄されてしまう食材・食品を寄付します。
そして寄付された食材・食品をフードバンクが、児童養護施設や子ども食堂などの施設や、ホームレスのための炊き出し、老人ホームなどに届けます。
フードバンクのメリット
フードバンクは、関わっている人たちそれぞれにメリットがあります。
企業や農家などの食べ物を送る支援者は、食品の廃棄コストを減らすことができます。廃棄コストはキロ単位で100円以上と言われています。もし日本の食品廃棄量である約612万トンすべてを、フードバンクで活用できれば6億円以上もの廃棄コストを削減することができます。
食べ物をもらう受益者にとっては、安全な食事をとることができ、食費を下げることができます。そのうえで、家庭なら子供の学費や携帯代などの養育費に充てたり、施設なら設備費に充てたりするなど、食費で浮いたお金を別の所に使うことができます。
どんな食べ物を届けているの?
では、フードバンクが扱う食べ物にはどんなものがあるのでしょう?
フードバンクでは、寄付を受けられる食品とそうでないものがあります。運営する団体によって対象となる食品は変わってきますが、今回はその一例を紹介します。
寄付を受けられる食品
・缶詰など加工食品全般
・野菜・果物などの生鮮食品
・(賞味期限の近い)乾パンなどの防災備蓄品
・米・パンなどの穀物
・冷凍食品
など
寄付を受けられない食品
・お弁当(販売期限と消費期限の間隔が短すぎて配送できない)
・サンドウィッチ(お弁当と同様)
・食べ残しの食品(衛生上の問題)
・賞味期限が切れた食品、賞味期限の記載のない食品(安全上の問題)
など
参考:セカンドハーベストジャパン 食べ物の問題・フードバンクとは
http://2hj.org/vision/problem/
このように、フードバンクでも、賞味期限や衛生上の問題で受けつけられない食品があります。
たとえば、コンビニやスーパーなどでは毎日お弁当やお惣菜の売れ残りが売れ残ってしまっています。しかし、残念ながら、フードバンクでもそういった売れ残ってしまったお惣菜などは寄付を受け入れていない所がほとんどです。
逆に、保存の効く缶詰やレトルト食品、消費量の多いお米や麺類などは需要が高くフードバンク側も積極的に寄付を募集しています。また、これは各フードバンクによって受け入れている所とそうでない所がありますが、野菜や果物は栄養価が高く支援先の生活困窮者からとても喜ばれるそうです。
コロナ禍で需要の高まるフードバンク
実は今、コロナの影響でフードバンクの需要が高まっています。特に、ひとり親家庭からの申請が増加しているようです。コロナの影響で仕事がなくなり生計が厳しくなった家庭や、子供の給食がなくなった分の食費の増加で家計が苦しいといった声が出てきています。
こうしてフードバンクの需要が高まる一方で、フードバンク側も困難な状況にいます。まず、資金面の問題です。フードバンクでは、食べ物を支援する際の配送料を負担しています。しかし、コロナの影響で申請者が大きく増えたため、この配送料がフードバンクの財政を厳しくしています。
また、人員の問題もあります。フードバンクでは、食品の仕分けや倉庫の整理などの作業をボランティアの方に手伝ってもらっている所がほとんどです。しかし、このコロナ禍の中では多くのボランティアに手伝ってもらうことも難しいです。
このように、このコロナ禍でフードバンクの需要が高まる一方、そのフードバンクの運営団体の体制が追いついていないという問題が起こっています。
フードバンクをやってみたいという方へ
この記事を読んでフードバンクに興味を持った方もいると思います。
個人でもフードバンクに関わることができます。その場合、大きく分けて2つの関わり方があります。
1.フードバンクに食べ物を寄付する
個人でフードバンクの活動を手伝ってみたいと思う場合、この方法が1番簡単かもしれません。家に余っている缶詰や、お米、野菜などをフードバンクに送ってみましょう。その際、団体ごとに寄付が可能な食べ物が決まっているので、事前に団体のHPで調べておきましょう。
2.フードバンクの活動を手伝うボランティアに応募する
上の方で述べたように、コロナの影響を受けたフードバンクの需要の高まりによって、ボランティアのスタッフも不足している所が増えています。緊急事態宣言の影響もあり、ボランティアの募集をストップしている所もありますが、募集しているところもあるので、まずは調べてみるといいかもしれません。
まとめ
今回紹介したように、フードバンクの仕組みは食品の需要と供給を再分配し、食品ロスの削減につながっています。しかし、コロナの影響はこのフードバンクにまで及んでいます。それでも、フードバンクの活動は個人でも様々なかたちで支援できるので、この記事で興味を持った方はぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
文/図:藤田慶太
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