食のエシカルその3 エシカルな「平飼い卵」を知っていますか?

「平飼い卵」(ひらがいたまご)は、健やかな環境で育てられた親鶏から採られたプレミアムな卵です。おいしく、食べるひとの健康にもよいとされます。この記事では平飼い卵の紹介と、「ふつうの卵」から「平飼い卵」に変えた時のコストを考えます。

目玉焼きの料理にパンやトマトがつく


平飼い卵ってなに?

「一日一個の卵を食べると健康によい」とよく言われます。タンパク質も取れますし、ビタミンやアミノ酸も豊富です。コラーゲンは美容にもよいと聞きます。

さて、今回、紹介する「平飼い卵」(ひらがいたまご)は言ってみれば「プレミアムな卵」、ワンランク上質な卵です。

「平飼い卵」の生産者は、親鶏を土の上や広々した鶏舎で飼育します。そうした健康的な環境でできた平飼い卵は、食べるひとの健康にもよさそうです。

他方、日本のスーパーで売っている卵のほとんどは、「ケージ飼い」(鳥かご飼育)で生産されます。狭い鶏舎でケージに入れられて、エサをつつく以外に身動きもとれないような状態で飼育されています。これでは卵を産む鶏もつらいでしょう。

ここで気になるのは次の2点かと思います。


平飼い卵はどのくらい食べるひとの健康によいのか?
・平飼い卵を買うとどのくらい食費が上がるのか?


それぞれ見ていきましょう。


平飼い卵を買うエシカルな理由

平飼い卵は、どのくらい食べるひとの健康によいのでしょうか。実はよくわかりません。平飼い卵だからといって、栄養素(ビタミン、カルシウム、アミノ酸など)の量がぐっと多い、という話は聞きません。

「え、じゃあどうして平飼い卵を買うの?」

と思われるでしょう。2つ理由があります。


アニマル・ウェルフェア(動物福祉)の観点

一つはエシカルな観点で、アニマル・ウェルフェア(動物福祉)に貢献できるからです。「ケージ飼い」では、鶏の扱いが「残虐」になる場合が多いため、世界的にも平飼い(ケージフリー)へ移行する動きがあります。スターバックスやネスレ、ユニリーバといったグローバル企業は「ケージ飼い」の卵を使用しない方針に転換しています。

なお、ケージ飼いの鶏は環境が悪く、ストレスが大きいため、病気になりがちです。そのため、あらかじめ「抗生物質」を取らされます。それが卵の質に影響し、食べる人間にも悪影響を及ぼすのではないか、と言われています。たしかに、動物の生命(いのち)を分けてもらい、いただくのですから、親鶏も自然のままでいられる環境がいいな、と考えたくなります。


平飼い卵はおいしい

もう一つの理由は、「平飼い卵はおいしい」からです。筆者は、興味をもって一ヶ月の間、およそ20個の平飼い卵を食べました。

結論をいうと、「味は濃厚でおいしく、元気が出ます」。朝ごはんか昼ごはんに、目玉焼きやスクランブルエッグにして食べました。白身も黄身もつやがよく、健康的に見えますし、臭みもありません。

先のエシカルな話と関連しますが、平飼いの鶏舎では、親鶏が自由に動き回れる環境で、昼は地面をつつき、砂浴びで体を清潔に保ち、夜はとまり木で寝ます。農場によってはオスといっしょに飼われるため、卵が有精卵になるそうです。

結果、野生の習性が活きて、生命力のある卵になるのではないかと考えられます。背景を知ると、食べる時に気持ちがよいですね。


* なお、平飼い卵についてもっと知りたい方には以下の2つのサイトをおすすめします。良質な説明がされています。どちらも北海道の農園です。

永光農園
小林農園


平飼い卵の食費はどれくらい? サブスクリプションモデルで考える

では、平飼い卵を買うとどのくらい食費が上がるのでしょうか。

たしかに平飼い卵は「ふつうの卵」より高いです。そこで、ひと月の間、平飼い卵を食べた場合、一人当たりいくら食費が上がるのか、計算してみました。言ってみれば「サブスクリプションモデル」「平飼い卵を食べる生活」を考えてみるのです。


ふつうの卵:10個入りが150〜200円ほど
平飼い卵:6個入りが200円台後半〜


「ふつうの卵」はさほど価格差はないものと思います。「平飼い卵」は、生育環境へのこだわりの度合いがさまざまであり、それによって価格も変わりますが、オーガニックストアの「ビオセボン」(フランス発。日本ではイオン系列)の卵の棚を参考にしました。

平飼い卵は6個入りで売られていることが多く、200円台の後半から400円近くするもの、また、もっと高いものも置かれています。ちなみに、オーガニック系でないスーパーにも置かれていることはあります。

では、ひと月の間、ひとりが毎日1個ずつ食べた場合を計算しましょう。仮に、ふつうの卵は10個で150円、平飼い卵は6個で300円とします。


ふつうの卵:450円/ひと月、一人当たり
平飼い卵:1500円/ひと月、一人当たり

* ひと月は30日として計算


こう考えると、毎日「ふつうの卵」を食べていたひとが、ぜんぶ平飼い卵に切り替えた場合、差額は約1000円/月ということになります。(ちなみに、筆者のケースでは、実際にはひと月の間、毎日消費したわけではないので、700〜800円/月の増額でした)。

これならば、音楽や映画・ドラマのサブスクリプションサービスと比べた時、「エシカルになれるし、生活の質が上がるならよいかも?」と思えないでしょうか。

これから冬にかけて、ひとも脂質を蓄える時期。おでんには卵を入れたくなります。大切に育てられた平飼い卵を味わい、「いのち」をいただく経験は体も心も元気にしてくれるかもしれません。


文:木村洋平


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