「エシカル」という言葉は「SDGs」に近い意味ですが、もっと草の根的で一人ひとりの生活に根ざした行動を指します。
今、「エシカル」とはなんでしょうか?
エシカル(倫理的)という言葉は、トレンドの「SDGs」(エスディージーズ)とほとんど同じことを指していますが、とくに個人が始める行動を意識した言葉です。
エシカル消費からSDGsへ
エシカルは、もともと「エシカル消費」という「公平な買い物運動」から始まりました。
ですから、「オーガニックの野菜を買う」「ヴィーガン(菜食)のレストランに行き、お肉を控える」「フェアトレードの服を買う」といった行動は、エシカルの代表的なものです。
しかし、今の時代におけるエシカルの意味は、個人の買い物だけにかぎりません。
たとえば「エシカル」な事業や行動は広く、企業経営から公務、市民活動まで含まれます。今、日本で「SDGs」と言われるもの、すなわち「ひと、社会、環境、地域、文化に配慮したアクション」は、みんなエシカルだと言えます。
このような観点から考えると「エシカル」≒「SDGs、サステナブル、エコ、ESG」と言ってもよさそうです。どの言葉もおおよそ同じことを指しています。
エシカルはひとりの人から始まる
けれど、もし「エシカル」に特徴的なニュアンスがあるとすれば、それは「ひとりの人から始まる」という点です。
つまり「サステナビリティ」や「ESG」と言うと、政府・官庁・大企業・機関投資家がトップダウン式に進めるニュアンスが強いのに対して、「エシカル」はボトムアップのニュアンスが強く、「一個の独立した人間がなにをするか」を問うています。
エシカルは自分の頭で考え、ひとりでも行動する個人のあり方と言えます。
環境や社会のために「しくみを変える」「効率的に目標を達成する」だけでなく、内面からよりよい生き方を目指すのがエシカルです。ですから、エシカルはライフスタイルにも深く関わってきます。
個人から始まるエシカルの社会的な影響力は?
では、個人から始まるエシカルは、大きな社会的な影響力を持てるのでしょうか?
たとえば、気候変動も、過剰な森林伐採も、人権侵害もいまや世界的な課題です。その対応は、待ったなしです。そのため、解決には多国籍企業や機関投資家、政府、国連、NGOが連携して動くことが必要です。
そういう観点で見ると、エシカルはひとりの行動やライフスタイルから始まるので、ゆっくりで非効率的に思えるかもしれません。
ひとりの信念が世界を動かす
しかし、どんなこともひとりの信念から始まります。
世界的な企業であるAppleが、サステナビリティに舵を切ったのは2013年頃のことですが、それは約1年に渡ってNGOとやりとりを重ねて、説得されたためだそうです。誰かが本気でAppleと交渉することを決意したのでしょう。
学校ストライキをしたグレタ・トゥーンベリさんも、南米の小国で大量消費文明に疑問を呈したホセ・ムヒカ大統領も、タリバンに撃たれながら女性教育の必要性を訴えたマララ・ユスフザイさんも、自分の信念から行動を始めました。
この3人は、まだ世界が大きなトレンドとして取り上げていなかったテーマを、たったひとりになっても訴えかけるという気概を持っていました。
それほどの有名人でなくても、これまでエシカルSTORYで取材してきた方々も、みんな信念を持って行動しています。
エシカルとは、たったひとつの信念を貫くこと
エシカルとは、「たったひとつの信念を貫くこと」と言ってもよいかもしれません。
「自分はこれをやり遂げよう、身近な誰かや世の中のために必要だから」という思いを抱き、困難にぶつかっても、その志を貫くこと。
そういう生き方が、根本的な意味でエシカルです。
ひとの思いは強く、どんな仕組みやインセンティブもそこからしか作られないという意味では、「最初にエシカルありき」と言えます。
あなたのエシカルは、なんでしょうか?
文:木村洋平
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