「マイクロ・ライブラリー(小さな図書館)」ってなに?──本を通じた地域コミュニティづくり

いまや全国に1500以上ある、小さな私設図書館「マイクロ・ライブラリー」。本を通じた地域コミュニティづくりを紹介します。

可愛い小さな本棚

今回は、あなたが住む地域にもあるかもしれない、小さな私設図書館「マイクロ・ライブラリー」をご紹介します。

インターネットに接続する時間が増え、町の本屋も減少し、ますます本離れが進みます。一方で、ビブリオバトルなど、あらためて本の価値を見直そうという取り組みも出てきています。

「マイクロ・ライブラリー」も本と触れ合える活動の一つで、地域のコミュニティづくりにも貢献しています。


マイクロ・ライブラリー(小さな図書館)って何?

「マイクロ・ライブラリー(小さな図書館)」という言葉を初めて聞いた方もいるのではないでしょうか。

マイクロ・ライブラリーは、個人や小規模な団体が運営する、民間の小さな図書館のこと。

その場所は、個人の家の前やカフェ、オフィス、お寺や学校、地域の人が集まるスペースなど実にさまざま。運営する目的や方法、特徴も図書館によって異なります。

たとえば、家の前に設置した木箱で貸し出しを行う「リトル・フリー・ライブラリー」。

古民家や空き家を再活用し、地域のなかの居場所も兼ねている図書館。

また、コワーキングスペースに併設する図書コーナーなどもあります。

いま、このようなマイクロ・ライブラリーは、国内で1500を越える数にまで増えています。


マイクロ・ライブラリーが持つ社会的な役割

マイクロ・ライブラリーが持つ社会的な役割はおもに2つ挙げられます。

ひとつは、人と人とのつながりが生まれ、新たなコミュニティづくりの助けにもなっていること。

なぜなら、地域の居場所や交流の場を目的の一つにしているところが数多くあるためです。

また、個人や小さな団体が運営しているところが多く、主催者(運営者)と利用者との距離が近いのも理由の一つ。

ふたつめは、本屋や図書館が近くに無い環境でも、子どもが本に触れる機会を提供できるところです。

マイクロ・ライブラリーは、これらの特徴から、エシカルな社会的活動と言えるでしょう。


古民家を改装 懐かしさを感じる「星空の小さな図書館」

そんなマイクロ・ライブラリーのひとつが、千葉県いすみ市にある「星空の小さな図書館」。古い納屋を改装した図書館で、近隣の人が集まる憩いの場となっています。

星空の小さな図書館があるのは、町の喧騒を離れたのどかな里山地域。

懐かしさを感じる外観と相まって、思わずほっとしてしまう場所です。

開館は日曜日と月曜日の13〜19時の間。子ども向けの本や絵本もあり、親子連れもゆったりと利用することができます。

「子どもから高齢の方まで気軽に立ち寄れる場所になれば…」という思いから始まった星空の小さな図書館。はじめは、隣接する古民家シェアハウスの住人が持ち寄った本がおもな蔵書でした。

これまで、図書館での映画観賞会や英語教室の開催など、運営者や会員によるイベントも実施されてきました。

現在は、本を通じて地域のローカル鉄道を応援するプロジェクト「い鉄ブックス」とも連携し、その寄贈本の一部も図書館の蔵書になっています。

図書館開館から7年が経ち、いまでは、本を通じた地域活性化の拠点の一つになっています。


自分にできる小さな一歩が社会を変える

本を読んだり、本を借りたりする場所があることで、人が集まるきっかけになります。

たった木箱一つ分の本を利用した小さな活動であっても、人に喜んでもらうことができるのです。

本は、自分で読むだけでなく、人と人を繋ぐ可能性を秘めています。

ご興味を持たれた方は、最寄りのマイクロ・ライブラリーを訪れてみたり、一歩踏み込んで仲間と活動を始めたりしても面白いかもしれません。

マイクロ・ライブラリーに限らず、「こうなったらいいな」という想いとアイデア、そこから生まれる小さなアクションも、社会に影響を与えます。

あなたも、自分にできる、小さく素敵な一歩を踏み出してみませんか。


参考『ビッグイシュー 日本版』327号,2018年1月15日刊

『コミュニティとマイクロ・ライブラリー』まちライブラリー マイクロ・ライブラリーサミット実行委員会2015編、磯井純充 他 著、まちライブラリー、2016

礒井純充「新時代におけるマイクロ・ライブラリー考察 」


文/撮影:有馬里美


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