人類と香りの物語 〜香木や香草で癒やされよう〜

今回は、人類と香りの歴史についてご紹介しながら、エシカルな香木と香草の魅力をお伝えします。太古から人々を魅了し、癒やしを与えてきた「香り」とはなんでしょうか。

香木を焚いているお皿
香木を焚く


アロマオイルやお香など、良い香りを嗅ぐと幸せな気持ちになりますよね。

香水をつけて香りを身にまとったり、快適な空間づくりのために芳香剤を置いたりしている人も多いと思います。また、今では洋服の洗剤や柔軟剤も、まるで香水のように複雑な香りの種類がありますよね。香りは多くの人々の生活に欠かせないものになりました。

今回は、そんな香りと人類との出逢いの歴史を紐ときながら、伝統に根ざした「香木」と「香草」をご紹介します。文化を大切にするエシカルです。


人類と香りの深いかかわり

焚き火砂浜
人類は芳香物質を含む木に火をつけていた


そもそも、人類が香りを生活に取り入れ始めたのは一体いつなのでしょうか?
歴史をたどると、はるか昔、太古の時代にまでさかのぼります。

人類は、火を手に入れることによって、香りと出逢ったと考えられます。
香(香料、香水、芳香)を示す英語「Perfume」が「Per(throught)+fume(煙)」、すなわち「煙を通して」という意味であることからも、人が良い香りに接した最初の方法が、芳香物質に偶然火を点けることであったと想像できます。


火は人類が生きるために欠かせないものです。香りと人類は出逢った頃から密接な関係にあったと言えそうですね。

100万年以上も遡った遥かなる太古、大自然から火を得た人類の先祖たちは、貴重な火の持続のため、草木を集めて燃やし続けました。 あるとき突然、炎の中から煙と共に立ち上る芳香。

その香りは、人の神経を研ぎ澄まし、魂をゆさぶり、時として鎮静とやすらぎを、時としては陶酔とときめきをもたらしました。人類は人知を超えるその香りに、神秘の力を感じたに違いありません。

「日本香堂」から引用。 https://www.nipponkodo.co.jp/inori/episode/


歴史をさかのぼっていくと、古代文明において、芳香物質は主に薬や宗教儀式に使うものとして用いられていました。

たとえば、古代エジプトでは、埋葬するミイラの保存状態を良くするためにお墓に香料を敷き詰めたと言われています。古代インドをはじめとする仏教のさかんな国々では祈りの儀式にお香が焚かれました

香りがこういった宗教や儀式的なことを離れるのは、もう少し後の時代です。

お香は一般庶民にまで広く浸透し、実用的な用途だけでなく嗜好品としても使われるようになります。文明が発展するとともに世界各地で庶民もまた、生活のなかで「香りを楽しむ」方法を見つけはじめるのです。

太古の人類が初めて香りに出会った瞬間に想いを巡らせたならば、香りのアイテム選びも、いっそう豊かに味わえるのではないでしょうか。


香木や香草で自然の香りを味わう

お皿の上で香木を焚いている
香木に火をつけて室内に香りを満たす


前述のように、人類にとって最も原始的な香りの楽しみ方は「香木や香草に火をつけて焚く」というものでした。

現代でも、エシカルに香りを楽しむアイテムとして世界中で注目されているのが香木の一種である「パロサント」です。

南米地方では、古来から人々の間で大きな影響力を持つシャーマン(霊能者、指導者、祈祷師)たちが宗教儀式に香木を用いていました。なかでもパロサント(Palo Santo=スペイン語で「神聖な木」)ウッドは、空間の邪気を払う効果があるとされ、その名の通り神聖なものとして重宝されてきました。

現在は、小さな薪のようなスティック状で販売されています。

専門ショップの例:ルナ・スンダラ Luna Sundara

* パロサントはワシントン条約で規制がかけられており、あまりに安い商品は避けた方がエシカルかもしれません。パロサントを扱う認定農家から正規のルートで加工、流通、販売されている製品がエシカルで、サステナブルといえます。


こうした香木の楽しみ方としては、スティック状のパロサントにそのまま火をつけてお香のように焚く方法が一般的です。

お家で楽しむには、パロサントスティックと火が燃え移らない素材の受皿、火をつけるマッチやライターがあれば大丈夫です。

スティック状のパロサントに火をつけたら、先端をゆっくり燃やしてから静かに火を振り消します。パロサントから立ちのぼるバニラに似たふくよかな香りと煙の浄化効果を味わいましょう。


* スティック状のパロサントをカッターなどで削りチップ状にしてから焚く方法もあるようですが、少し手間や道具が必要になりますので、はじめてパロサントを使ってみたい方にはスティック状のまま焚く方法がおすすめです。


パロサントは、そのスピリチュアルな由来からヨガや瞑想などで心をクリアにしたい時に使われることも多いようです。とはいえ、ほかにもさまざまな使い方や魅力があります。

たとえば、樹脂を豊富に含んでいるパロサントは焚いた際の火の回りがゆっくりなので、市販のお香よりも非常に長持ちするという魅力があります。香りももちろん自然な木の香りですので、長時間、嗅いでいても身体へのストレスも少ないでしょう。

また、火をつけない使い方としては、小さな布袋に入れてそのままお部屋に置いたりお風呂に入れて消臭・芳香剤として楽しむ方法もあるそうです。


おまけ:ホワイトセージ、香草のすすめ

最後に、おまけとしてホワイトセージの葉をご紹介します。ホワイトセージ(ハーブの一種)は、パロサントと同様に邪気払いとして用いられる香りのアイテムです。もともと、ネイティブ・アメリカンの間で親しまれていたことでも知られています。

こうした香草たちも、自然のさわやかな香りとともに空間を浄化してくれるアイテムとして、ひそかに日本でも人気を呼んでいます。

長時間自宅にいることが多くなった今だからこそ、自然な香りに癒やしを求める人が増えてきているのかもしれませんね。

香草を紐で縛ったものに火をつける
香草に火をつける


まとめ

歴史を眺めてみると、地域や習慣によって種類は異なりますが、人類にとって最初の香りの楽しみ方は、香木や香草を焚くことだったようです。こうした「お香」は私たちにとって最もシンプルな香りの楽しみ方と言えそうですね。

調香技術が発達し、香りの種類が多岐にわたる現代では、本当にいろいろなアイテムで香りを楽しむことができますが、今回は、あえて歴史をさかのぼってみました。

そうして、「文化を大切にする生活」としてのエシカルな香りのアイテムを探してみると、古代に立ち返ったような、シンプルな香木・香草に行きつきました。お部屋やベランダ、お庭で焚いてみれば、幸せな空間が生まれるかもしれません。


このように、多種多様に変化しながら人々の生活に寄り添い続ける「香り」。
これからも私たちの暮らしの変化とともに、新しい「癒やしのかたち」をつくり続けてくれるでしょう。


* 参考:日本香堂 公式サイト


文:中野鳩子


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