ハラスメントや差別を防ぐ「アクティブ・バイスタンダー」(行動する第三者)として動くためのワークショップを受けました。

筆者は、株式会社SISTERSが主催する研修「アクティブ・バイスタンダー ワークショップ」に参加しました。ワークショップはIMPACT SHIFT(インパクト シフト)2025の会場でおこなわれました。この記事は体験レポートです。
行動する第三者
「アクティブ・バイスタンダー」とは「行動する第三者」の意味。ハラスメントや差別が起こった場面で、そばにいる人が「なにもしない傍観者」ではなく、「行動する第三者」になることで、ハラスメントや差別がそれ以上起こるのを防いだり、その被害をやわらげることができます。
「飲み会」のシーン
ワークショップでは、「飲み会」でセクハラが起こるシーンを想定しました。上司の役の人が、お酒を飲みたがらない部下にお酒を何度もせまり、それに対して、部下や周りの人(=アクティブ・バイスタンダー)がどう反応するかを自分で考えて、演じます。
なお、無理にお酒をすすめる会話は、あらかじめシナリオとして用意され、プロジェクターで投影されています。上司がお酒を勧めるセリフのあと、アクティブ・バイスタンダーが介入します。会場では、いろいろな対応が見られました。
アクティブ・バイスタンダーが対応する場面が終わると、グループ内で役割を交代して2回目、3回目をやります。また、個人のSNSを知ろうとするシーンも演じられました。

どう反応するか
会場にはいくつかのグループがありました。アクティブ・バイスタンダーの行動は、各自が考えてワークショップの中で表現します。
- 「やめてください。いやがっているじゃないですか」と止める。
- 話に割って入り、「お名刺をいただけますか」と話しかける。(相手の名前や所属先を知るため)。
- 「それはセクハラです」と指摘する。
- 「僕がいただきます!」とお酒が強い自分が飲む。
- 「ところで〇〇さんの最近の近況を教えてください」と話をそらす。
- 「ぜひ〇〇さん(お酒を強要した方)の飲みっぷりが見たいです!」と相手に勧める。
また、ハラスメントや差別にその場で介入するのが難しい場合に、アクティブ・バイスタンダーの行動には、注意をしたり、話をそらして直接介入するだけではなく、あとから被害者に声かけをして、ケアやフォローをする選択肢や、先輩などの信頼できる人に助けを求める場合もあります。
性犯罪にかかわる刑法改正
また、研修では性被害・性犯罪のお話もありました。この10年の間に日本の刑法が大きく改正されました。
2017年、性犯罪に関する刑法が、110年ぶりに大きく見直されました。この改正では、被害者が男性の場合でも処罰の対象となり、性別を問わず被害が刑事罰として扱われるようになりました。また、被害を受けた本人が訴え出なければ処罰されない決まり(「親告罪(しんこくざい)」)でしたが、2017年の法改正以後、被害者以外でも告訴できるようになりました。
そして、2023年には、「不同意性交等罪」が新設され、暴行や脅迫ではなく、同意の有無が判断の基準となりました。たとえば、飲酒や地位・権力の差により抵抗できなかったケースも性犯罪として認定されるようになりました。また、性交の同意年齢は13歳から16歳に引き上げられ、SNS等を通じた子どもの誘引行為への罰則も強化されました。
法務省のサイトにくわしい説明があります。
まとめ
アクティブ・バイスタンダーのワークショップでは、セクハラをする被害者、加害者のそれぞれの場面を演じ、それに対するアクティブ・バイスタンダーの対応を受けます。また、横で見ていて介入する場面も演じます。
体験のためのワークショップだとわかっていても、自分で演じたり、目の前で見ていると、状況に対して違和感(いわかん)や不安、おそれを感じます。そこにある言葉や行動の暴力性に気づく体験ができる、ということだと思います。それをどう回避するか、やわらげるかは知恵だと感じました。

ワークショップの主催者である鈴木さんは「違和感を感じること、迷いや悩みが生じる感覚を大事にしてほしい。それがあることで、自分が加害者にも被害者にもならないように気をつけられるし、周囲に起こる被害を防げます」と伝えてくれました。
企業・法人の研修やイベント、大学や小中高等学校でも役に立つワークショップでしょう。
株式会社SISTERSについて
「性別による不条理な出来事を無くし、誰もが自分らしく生きられる社会」をミッションに掲げ、ハラスメント対策支援や、女性活躍やD&I推進を促進する法人研修を提供しております。
参考:「これって性暴力…?」性暴力/性犯罪について具体的に解説!【相談先の情報付き】
【電車内の痴漢被害時の対処ガイド】 あなたの安全と対応策について
「性犯罪・性暴力とは」内閣府 男女共同参画局
取材/文:木村洋平
ワークショップの画像提供:一般社団法人IMPACT SHIFT
ワークショップ主催/本記事の監修:NPO法人SISTERS
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