森林事業で気候変動を止めよう(三井物産 浜志門さん、田中里央菜さん 前編)

三井物産では森林の活用とそのための保全・育成を事業としており、気候変動(地球温暖化)問題の解決に貢献しています。

三井物産の社員ふたり
田中さん左と浜さん右

三井物産では、気候変動(地球温暖化)問題の解決に光合成の力で貢献する、森林の活用と保全・育成を事業として行っています。

どのような背景があって、こうした事業が手がけられているのでしょうか。森林事業を担当する浜志門さんと田中里央菜さんにお話を伺いました。(以下、敬称略)


──インタビュアー(木村):三井物産では、森林に関する事業がもともと盛んだったのでしょうか。

浜:弊社では、製紙原料となるウッドチップの調達や供給等、長年森林資源事業に携わってきました。

海外植林も25年以上前から手がけています。たとえばオーストラリアではユーカリを植えて、紙の原料として輸出してきました。

木は、再生可能な資源であるところが特徴です。化石燃料や鉱物資源などの地下資源とちがって、収穫後も再度育成することができます。


──そうした森林事業が今、気候変動対策につながっているのですか。

浜:はい。森林の二酸化炭素吸収効果に着目して森林への投資を希望する会社が増えています。

また、二酸化炭素の吸収量を「排出権」として認定する制度を持つ国やNPOもあり、森林由来の排出権の需要が強まっています。

弊社の森林事業はこれらに応えています。


──二酸化炭素の「排出権取引」と呼ばれる新しいビジネスの領域が生まれたのですね。

浜:そうです。

京都議定書(1997年 採択)において、先進国が二酸化炭素の削減目標を取り決め、国際的な排出権取引が2000年代より活発化しました。社会全体で見たときに、より削減・吸収効率の高い分野での取り組みが進むよう、削減・吸収量を取引できるようにする制度が、排出権取引です。

浜さん
浜さん

世界的にも今、二酸化炭素を削減するやり方としては、植物の力を借りて光合成で吸収する方法が注目されています。弊社としても、これまで培った事業経験を活かし、気候変動問題解決に貢献する森林資源事業を展開しています。

最近は、森林資産への投資機会を提供するNew Forestsというオーストラリアの森林ファンド運営会社に追加出資する意向を決定しました。


──気候変動に関しては欧米が先進的かと思いますが、日本もカーボンニュートラルに向けて本格的に動き出していますね。

田中:世界的に見ると、欧州が最もESG、サステナビリティの意識が高いと思います。欧州投資家は特に環境への感度が高く、たとえば、グリーンボンドが発行されると、億ユーロ単位でもすぐに買い手がつくような状況です。

日本でも環境意識の高まりと共に、政府・民間の両輪で、急ピッチでグリーン政策が進んでいます。

* グリーンボンド(Green Bond)とは、気候変動対策や再生可能エネルギーなど、環境分野への取り組みに特化した資金を調達するために発行される債券のこと。


──貴社の森林事業では、気候変動対策だけでなく、ほかの点でもエシカル、サステナブルを心がけているのでしょうか。

浜:生物多様性を保護し、土壌流出等も起こさないような林業運営を行っています。

土壌や生態系の保全を含む、森林資源のサステナビリティに関する認証制度があり、その認証を受けられるように事業を進めています。森林資源や排出権の創出ができたとしても、たとえば希少な生物に被害を与えてしまっては、持続可能な事業とは言えないからです。

田中:生物多様性の観点もさることながら、地域住民にとって事業がサステナブルか、という点も重要なポイントです。

今、アフリカの植林事業に注目しています。弊社は、ケニアの小規模農家と共に植林を進めるスタートアップ企業であるKOMAZA社に昨年投資し、事業支援にも関わっています。

KOMAZA社は、植林によって環境を守るだけでなく、小規模農家の収入を向上させること、生活の安定を図ることも事業の目標に含めています。そういった観点も、投資をする時の重要な要素だと考えています。

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取材/文:木村洋平
撮影:佐藤淳

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