無印良品やスーパーでコオロギせんべいを見かけるようになりました。今、世界的な食糧危機に対する有望な食材として「昆虫」が注目されています。
世界人口は2050年までに97億人まで増え、食糧需要量は2010年比で1.7倍になると言われています。
世界的に森林破壊や砂漠化が進むなかで、これだけの食糧をまかなえるのでしょうか?
昆虫食は食糧危機の解決策になる?
2013年5月13日、国連食糧農業機関(FAO)は昆虫食に関する報告書を発表しました。
報告書の内容は、気候変動や人口増加による食糧危機の解決として昆虫食が有力であるというもの。昆虫を食用や家畜の飼料とすることを推奨しています。
「食糧危機」とは、世界全体で食糧が不足する状況です。FAOなどの国際的な機関が2050年までに食糧危機が起きるとし、警鐘を鳴らしています。
実際、経済成長が進むと、所得の上がった国で肉の消費量が増える傾向があります。しかし、肉の生産には、大量の水や穀物などの飼料が必要となるうえ、温室効果ガスの排出量も増加し、気候変動に悪影響を与えます。
さらに、気候変動は農業の生産を不安定にし、世界的に食糧不足を引き起こす可能性があります。
こういった状況のなかで注目されたのがコオロギや蚕の幼虫などの「昆虫食」でした。
食肉に比べ、環境負荷が少ない
昆虫食の特徴として、食肉よりも環境負荷が少ないことがあります。
例えば、コオロギ1kgを生産するのに必要な飼料は2kgですが、豚の場合は7.3kg必要とされています。カイコの幼虫は1kgにつき4.22kgの飼料が必要ですが、それでも豚よりエネルギー効率は良いといえます。
また、昆虫は温室効果ガスの排出量が少ないです。FAOの調査では、3種の昆虫(ミールワーム、コオロギ、バッタ)の温室効果ガス排出量は、豚や牛の排出量の100分の1だと報告されています。
昆虫は雑食であること、少ないスペースで飼育できることもメリットです。
栄養価の高い昆虫食
栄養面を見ても、昆虫たちは、タンパク質や繊維質、良質な脂肪、必須ミネラルを含むと言われています。
昆虫は、魚や肉と比べ,良質なたんぱく質や微量栄養素を提供します。昆虫類はほとんどの魚類と比べて脂肪酸を多く含むので、栄養不良の子供のための栄養補助食品としても活用できます。その上,昆虫には繊維、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、亜鉛などの微量栄養素も多く含まれています。
国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所「昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献」
昆虫はさまざまな栄養を蓄えていますが、特に注目されるのが「タンパク質」です。
人間の健康には良質なタンパク質が必要で、現在は肉や魚から補っています。しかし人口増加や経済成長により、タンパク質の供給が追いつかなくなる可能性があります。
例えば牛肉(生)のタンパク質含有量は肉100gあたり19〜26gですが、バッタは35〜48gという高い含有率です。
昆虫を常食とする国は多い
未来の食材として扱われることの多い昆虫ですが、今も日常的に昆虫を食べている国は多いです。南極以外の全大陸に、昆虫食文化が残っています。
2013年時点で、100カ国以上で20億人が昆虫を常食としています。
- アフリカ 36カ国
- 南北アメリカ 23カ国
- アジア 29カ国
- ヨーロッパ 11カ国
食用の昆虫は1900種類以上で、主に8種の昆虫が食べられています。
参考:国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所「昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献」
最も割合の大きい甲虫類は、カミキリムシやコガネムシなど。日本でもスーパーや食料品店で見かけるようになったコオロギは、バッタ類に含まれます。
日本でも馴染みのある昆虫食
田舎のおばあちゃんの家で、イナゴの甘露煮が出てきてびっくりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
昆虫は日本人にとって馴染みのある食料で、現在も長野県をはじめとする各地で今も販売されています。
日本で食べられているのは、イナゴや蜂の子、蚕さなぎ、まゆこ、さざむしなど。煮る、焼く、漬ける、揚げるといった多様な方法で調理されています。
昆虫食を食べてみました
先日、ホームセンターで2種類の昆虫食(コオロギ)を見つけたので買ってみました。
- コオロギスナック
- コオロギおつまみ
左側は粉末コオロギを使った「コオロギスナック」、右側は乾燥コオロギに味付けした「コオロギオツマミ」です。
袋から出してみました。
コオロギオツマミは、見た目もコオロギです。乾燥小魚のようにも見えたので、抵抗なく食べられます。
コオロギ自体の味が薄いのか、それぞれ添加されたフレーバー(スナックはラーメン味、オツマミはガーリック味)しか感じられませんでした。
コオロギ独特の風味は無いので、誰でも食べられそうです。
* 甲殻アレルギーのある方はお控えください
まとめ
日本でも、農林水産省が2020年10月に立ち上げた「フードテック官民協議会」で昆虫食は注目されています。昆虫食に参入する企業も、続々増えているようです。
近い将来、バッタやイモムシなどの昆虫が食材としてスーパーに並ぶかもしれません。
見た目は少し抵抗がありますが、味は美味しく、粉末状だと昆虫であることを忘れてしまいます。もっと種類が増えたら良いなと思いました。
栄養価が高く、環境に優しく、そして食糧危機から救ってくれる昆虫食の今後に、期待がふくらみます。
文:古賀瞳
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