マインドフルネスではじめるエシカルな生活


【文化編】マインドフルネスの歴史と文化について

マインドフルネス(マインドフルネス瞑想)のエッセンスは前ページの通り、シンプルなものです。実践的で、すぐに役立てられます。

しかし、マインドフルネス(瞑想)はぽっと生み出された単なるライフハック(生活のコツ)というわけではなく、歴史と背景があります。ここからはマインドフルネスの文化面を紹介します。



1.マインドフルネスのルーツ

まず、マインドフルネスの源流は仏教の禅にあります。また、インドのヨーガもルーツになっているようです。

まずは禅についてですが、20世紀の前半〜半ばに日本の思想家であり、禅の探求者である鈴木大拙(すずき だいせつ)がアメリカに渡ります。

そこで彼は、英語で禅と仏教思想を本格的に紹介しました。以後、アメリカではZEN(禅)への関心が高まります。その後、ZENは大衆文化から思想や学問のレベルまでアメリカに浸透しました。おそらく、この流れがのちの「マインドフルネス」に合流していくものと思われます。

こうしたZENと東洋の叡智ブームを受けて、おそらく1960年代に「マインドフルネス」という「アメリカ式の禅的瞑想法」が生まれました。

後述のティク・ナット・ハン(ベトナム出身の仏僧、英語で本を書いた)のような実践者がマインドフルネスの誕生と普及に貢献しました。

また、ビートルズの流行やヒッピー文化といったサブカルチャーも「東洋びいき」という点でこの動きを後押ししたでしょう。

* この歴史・文化については学術的な確証があるわけではありません。筆者が調べたかぎりの情報です。

ティクナットハン


2.マインドフルネスと 精神医学

次に、1980年頃、ジョン・カバット・ジンという瞑想の実践家・学者がマインドフルネスを医療に取り入れました。カバット・ジンは「マインドフルネスによるストレス低減法」を世に問い、マインドフルネスセンターも創設します。

ここから、マインドフルネスは医学(主に精神医学)に流れ込んでいきます。こうして「マインドフルネス」は学問や医療の世界でも認められ、社会的な権威も高まってきます。

おおよそ2000年頃から、マインドフルネスはポピュラーなものになり、ビジネスにも取り入れられる機会が増えました。グーグル、フェイスブック、アップルといった巨大な企業も社員研修に取り入れました。

エシカルな企業として早くから有名なパタゴニアも導入したそうです。また、アメリカ軍やメイヨークリニック(全米で最も信頼の厚い総合病院といわれる)も、マインドフルネス瞑想やマインドフルネスに基づくコーチングを導入しているそうです。

このような歴史があって、インターネットや一般書でも「マインドフルネスってすごいらしい!」と言われるようになりました。

ティクナットハンが運営するプラムヴィレッジ


3.「6秒の呼吸」

こうした教科書的な歴史とはべつに、ひとつ筆者が好きな話を紹介します。

いまはフランスでマインドフルネスの共同体(プラム・ヴィレッジ)を運営するティク・ナット・ハンの話です。ティク・ナット・ハンはベトナム出身の禅僧です。彼は西洋思想や社会問題に深い関心をもっており、若い頃から行動家でした。ベトナム戦争の時には、戦争の被災者や難民の救援に当たりました。

この時にティク・ナット・ハンは仲間や弟子に「6秒の呼吸」を教えていたそうです。

「怒りや恐怖、不安を感じたら、6秒静かに呼吸を整えよう。マインドフルネス瞑想のように呼吸をして、それから事態に対処しよう」と教えていました。実際、国境付近で銃を持った兵士に尋問された弟子が、6秒の呼吸をしてその場をくぐり抜けたエピソードがあります。ぎりぎりの状況で精神の安定を保つためにも、マインドフルネスは有効でした。


まとめ

ティク・ナット・ハンには多くの著書があり、日本語でも読めます。前述の鈴木大拙が思想的に難解であるのに比べると、ティク・ナット・ハンは一般向けで読みやすい本が多いです。

ティク・ナット・ハンは仏教者であり、禅僧ですが、ベトナム政府から敵視され、国外に追放されました。それもあって、「ZEN」や「仏教」ではなく「マインドフルネス」という言葉を掲げるようになったのかと推測します。

このように、マインドフルネスは歴史的にも地理的にも深く広い文化に根ざしています。そうした背景を知ったうえでマインドフルネスを試してみると、より効果を実感できるかもしれません。


文:木村洋平


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