「サステナビリティ」(持続可能性)は「エシカル」とも深いつながりのある言葉です。この記事では「サステナビリティ」とは何か? その全体像を丁寧にわかりやすく紹介します。

サステナビリティ──この言葉を、最近よく耳にするようになりました。
SDGsのカラフルなアイコンの貼られたポスターや、バッジを胸に着けている人も街で見かけます。日本語訳は「持続可能性」。文字通りに解釈すれば、社会の持続を指すであろうことは想像できます。
環境への配慮やエコといったイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、一歩踏み込んで考えると、「持続可能」とは何がどう持続することなのでしょうか?また、何をもってサステナブルであるといえるのでしょうか?
本記事では、日独の大学でサステナビリティを研究した筆者が、単なる辞書的な定義ではなく、サステナビリティという概念そのものについて、初心者にも分かるように解説していきます。
サステナビリティの広がり
サステナビリティとは「sustain(支える、耐える、持続する)」と「ability(能力、可能性)」で構成された造語で、2000年頃から世界で広まった比較的新しい言葉です。
日本で普及しはじめたのは、2015年に国連でSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されてからです。
日本では2017年がSDGs元年ともいわれます。SDGsは、国連の193加盟国が2030年までに達成すべき目標です。つまり、政府の目標です。法的拘束力はないものの、すでに採択から5年が経過。
京都議定書を締結に導いた元環境先進国、そして2020年東京オリンピック開催(が予定されていた)国として、日本政府の面子にかけてSDGsを推進したいのでしょう。
国連や民間団体だけでなく、政府がサステナビリティの義務教育や企業活動への盛り込みをプッシュしているのです。
サステナビリティとは何か?
サステナビリティとは何か?結論を先に言いましょう。
サステナビリティとは「バランス」のことです。さまざまな説を総合すると、大きく分けて次の3つのバランスに分けられると筆者は考えます。
1.「現在世代」と「将来世代」のバランス
2.「先進国」と「発展途上国」のバランス
3.「環境」「経済」「社会」のバランス
これらのすべてのバランスがとれた時、はじめて社会はサステナブル(持続可能)であると言えるのです。一つひとつ見ていきましょう。
1.「現在世代」、「将来世代」のバランス
まず、「現在世代」と「将来世代」のバランスについてです。サステナビリティについて最も重要な概念の一つが「世代間公平」です。
サステナビリティという言葉がはじめて定義された、1987年の環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)の報告書『我ら共有の未来(Our Common Future)』より、その定義を引用しましょう。
「持続可能な開発とは、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たすような開発である」
つまり、現代の我々の世代が豊かさを享受するだけでなく、子孫やまだ生まれていない将来世代も利益を享受できるよう配慮すべきである、という倫理的な(=エシカルな)価値観です。
どれだけ人類の文明が発展しようと、地球はたった一つです。しかし、我々は数世代だけで、地球の恵みである水、鉱物、植物、土壌、森林などの資源を、すべて使い果たそうとしているのです。
将来世代が背負う環境破壊の負債
もともとサステナビリティという概念は、18世紀のドイツの森林学者カルロヴィッツが初めて用いたとされます。
森林経営のためには、木の成長サイクルよりも早く、木材を伐採し尽くしてはならないという説を唱えました。いまや、我々は資源を使い尽くすだけでなく、地球を破壊する力すら手に入れてしまったのです。
その最たるものが、核兵器などの戦争の道具です。長期的には、地球温暖化、生態系破壊、水の汚染なども挙げられます。
これらの負債は、何の罪もない将来世代──遠い未来ではなく、すぐ我々の子供や孫の代に迫っています──が背負わねばならないのです。
たった一人のボイコットが世界的なデモに
この不公平に対して真っ先に声を上げたのが、スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんです。
彼女は、これらの問題を引き起こした張本人である現在の大人たちへの気候対策を要求し、たった一人で学校のボイコットをはじめました。
今では世界中の若者が彼女の活動に賛同し、数百万人の学生がデモに参加しています。