お問い合わせ「エシカルな未来」とはどんなものでしょう？ エシカル協会代表の末吉里花さんにお話を伺いました。
エシカル協会 代表の末吉里花さんにお話を伺いました。
末吉さんは、かつてTBS系「世界ふしぎ発見！」のミステリーハンターとして世界各地に行っていました。2015年にエシカル協会を立ち上げ、いまは日本全国の自治体や企業、教育機関などで「エシカル」の普及を目指し講演を重ねています。
──「エシカル」という言葉の意味を広くお考えですか。
末吉さん：エシカルは形容詞（「倫理的な」）ですから、「エシカル」×「〇〇」という風に掛け算で広げられます。「エシカル消費」をはじめ、エシカルなライフスタイル、エシカル金融などさまざまな分野にわたっています。
──「エシカルな企業活動」についてはどうでしょうか。
企業は「必要な情報を消費者に届ける」ということが、とにかく大事だと思います。
とくに日本の企業はエシカルな取り組みをしていても、自分から伝えたがらないことがあります。あるいは「これができました」と伝えるだけにとどまるのはもったいないと感じます。
たとえば、「いまはまだここまでしか達成できていないけれど、◯◯年までに実現を目指して頑張っています」というように、できていないこともきちんと伝えつつ、数値目標を公表することが重要だと思います。それがわたしたち生活者、消費者の「選ぶ基準」になるからです。
──末吉さんは若い人と話す機会も多いのでしょうか。
はい。
講演や交流会、イベントなどを通じて、高校生や大学の子たちとかかわることが多いです。今、中高生の不安がすごく大きいようです。2050年にはこの地球はどうなってしまうんだろう、と。そもそも、気候危機を招いたのは大人たちだ！私たちに責任を押し付けないでほしい！と怒りを抱いている若者たちもたくさんいます。
──グレタさんのような声が上がるのですね。
今の若い子たちは2100年にだって生きているわけですから。その時どうなるのか、と。
それから、彼らは社会に出て就職をしたとき、自分が大切にしてきた信念を持ち続けながら働いていけるのか、はたまた利益を優先とする資本主義に呑みこまれてしまうのか、矛盾を抱えて生きていかなくてはいけないのか、など多くの不安を抱えています。
＊ グレタ・トゥーンベリさんはスウェーデンの10代半ばの環境活動家。
──SDGsを推進する声は世界各国の大人にもありますが、いかがでしょう。
SDGsの七色バッジを胸につけているスーツ姿の大人がいるでしょう。彼らを「SDGsおじさん」と呼んでいる若い子たちもいます（笑）。これはある世代や性別に向けてというより、現実を見ようとせず、危機が迫っているのに行動に移さないすべての大人たちに向けて半分は皮肉を込めて、半分は鼓舞する意味で発している言葉だと私は受け止めています。
（グレタさんが始めた）Fridays For Future という活動は日本にも入ってきています。ふだんから積極的な活動を行なっており、SNSのアカウントをもっています。
＊ Fridays For Futureは未来のための金曜日という意味で、グレタさんがはじめた抗議活動。
──末吉さんは、エシカルにとってアートや文学を大切だと考えますか。
私は絵本も出版させてもらっていますし、アートや文学、それに哲学はとても大事だと考えています。
＊:『じゅんびはいいかい？ 名もなきこざるとエシカルな冒険』末吉里花著, 中山学画, 山川出版社, 2019
それなのに「文化」という発想がSDGsには抜けているように思います。どこにも入っていないですよね？ 文化は心を育むものです。それがないと人が育ちません。
SDGs は「持続可能な開発目標」ですが 、「開発」という言葉は仏教用語では「かいほつ」と読むそうです。これは「内なる心を耕す」という意味だそうです。
──英語のCulture（文化）も「耕す」という意味ですね。哲学と言えば、末吉さんはヴァンダナ・シヴァ（インドの哲学者、環境活動家）をお好きだったと思います。彼女はだいぶラディカルではないですか。
私には「いまの資本主義がこのまま続き、さらなる成長を求めていく」と考えているひとたちの方が「ラディカル」ではないかと思えます。それはともかく、私は今の発展の延長線上にエシカルな未来はないと思っているんです。だから、創造的破壊がいるのではないかとさえ感じます。
──「創造的破壊」はインパクトのある言葉です。
実は父から教えてもらいました。父は気候危機の問題を金融で解決するための仕事をしていますが、サステナビリティ（持続可能性）の文脈においてこの言葉を使っていました。「リニア（直線的）な変化はありえない」という意味です。しかし、こういった（ネガティブさを含む）話は外に向けて発信する仕方が難しいですよね。
たとえば、「ボイコット」(不買運動）は日本にはなじまないなと思います。海外ではなじむとしても、日本ではネガティブな表現はあまり評価されない傾向があります。
それに強い表現を使うと、ひいていく人たちもいます。多くの人を巻き込まないとエシカルな社会を築くことができないので、私は極力ポジティブな声を届けることで変化を起こせるようにと努力しています。
日本でエシカルに関心の高いひとやエシカルな起業家には女性が多いんですよ。（エシカルSTORY代表の）木村さんはまだ少数派の男性ですのでいっしょに頑張りましょう！（笑）
──はい、ありがとうございます！
取材・文：木村洋平
写真提供：一般社団法人エシカル協会
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