町田で100人カイギを主催する(北村友宏さん)

ローカルフォトグラファーの北村さんは町田市100人カイギの発起人です。約2年にわたるプロジェクト運営を通して、さまざまなひとたちがいるなかで、ゆるやかなつながりが生まれていくことに街の豊かさを感じたといいます。

ローカルフォトグラファーの北村さん
北村さん

取材日:2024年10月16日

ローカルフォトグラファーの北村さんは、町田市で「100人カイギ」を開催しようと呼びかけた発起人です。

約2年にわたる100人カイギの運営を通じて、地域には、「ジャンルや境界を超えていろんなひとがいるし、そのひとたち同士の出会いは予想を超えて広がっている」そのことに街の豊かさを感じたといいます。

100人カイギを始めたきっかけから後日談までを取材しました。


地域のお祭り

──100人カイギを主催しようと思ったきっかけはなんでしたか。

いちばんの大きなきっかけはコロナ禍でひとに会う機会が減ったことです。

それから「100人カイギ」という枠組みを使うことで、混ざり合う街のつながりを伝えられるのではないかと思ったのも大きな動機です。

元々、特定の組織やグループ内の交流には、まるで学校の教室のように、一定の空気感があり、階層的な立場も生まれやすいということに負担を感じていました。

そんな時に、地域のお祭りで、町内会・商店会のひとたち、ミュージシャン、個人店店主、通りすがりのひとたち…などいろんな人が混ざり合う中で過ごして、「いろんなひとがいる、だから自分もここにいていい」と感じる体験がありました。

その体験がやがて自分なりの価値観へとなっていくのですが、その感覚をいろんなひとたちに伝えたいと思ったのです。

100人カイギは、「街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティです」。毎回、ゲスト5名ずつに話をしてもらい、100人に達したら終了する。


ジャンルを越えて、まちの100人が集まる

──なぜ100人カイギを選んだのでしょうか。

全国でも3か所目に始まった「さがみはら100人カイギ」を見守っていましたが、はじめは町田では難しいのではないかと思っていました。

ですが、いろんな企画があり、いろんなひとに出会ったことで、特定のジャンルに留まらずに広げていくこともできるのではないかと思うようになりました。

はじめてのひとと出会う喜びを伝えるのであれば、僕たち自身もはじめて集まるメンバーでやっていこうと呼びかけました。僕たち自身がどれだけ変わっていけるのかということも企画のテーマのひとつでした。

最初のミーティングで60〜70名ほどの候補を提示しましたが、それをそのまま採用せずに、毎回メンバー間でアイデアを出し合いながら、お話しいただけるゲストを選んでいました。

スタッフ4名、アドバイザー4名という体制で、2021年の4月に準備を始め、2021年8月から2023年6月まで全20回の開催でした。

2年間という限られた期間、いろんな人たちに支えられたからこそやり切れたと感じています。

「町田市100人カイギ vol.18」の様子。
撮影:北村友宏

──北村さんが当初、考えていた広がりが生まれましたか。

毎回、ゲスト5人にはリアルで集まってもらい、ZOOMで配信し、参加者にはオンラインで視聴してもらいました。

最初は緊張した様子のゲストたちも、出番を終えてホッとする姿に拍手を送りあったり、話題を共有し合いながら、立場や肩書きを前提とした挨拶ではなく、同じ「100人カイギ」を体験した”仲間”になっていくような交流がありました。

また、5分間「プレゼン」5分間「司会との対話」という構成にしたことで、ゲストの活動が伝わると同時に人柄も伝わったのだと思います。

後半の交流会で言葉を交わし、週末の街中のイベントでも立ち話をし…という風にゆっくりと混ざり合うきっかけを作れたと思います。

何より地元には楽しいことがたくさんあるということを喜び合うことができました。

もちろん知らないものごとに遭遇(そうぐう)することが苦手なひともいます。それでも、動き出せば何かが始まる、新しい出会いがあれば新しい出来事が生まれると信じるひとたちと知り合えたのは何より嬉しいことです。

「町田市100人カイギ vol.17」の様子。
撮影:北村知宏


想定していなかった出会い

──動き出すと、街がそれに応えてくれるのでしょうか。

僕は、会いたいひともいる、長く会っていないひともいる、知らないひともいる…その全部が街の豊かさだと思っています。

他人だと思っていても、結局は話す機会がなかっただけで、何かしらの接点があったり、巡り巡って再会したり、変化は起こり続けていきます。

地元のイベントは特にそんなことが起こりますよね。

100人カイギで紹介することができた…という範囲を超えて、スタッフたちも知らないところで交流が広がっていること。手のひらからこぼれ続ける喜びがあることが「街の豊かさ」ではないかと思うのです。

「町田市100人カイギ vol.9」の様子。
撮影:北村知宏

 

北村さん自身の変化

──100人カイギを終えてみて、北村さん自身にも変化がありましたか。

自分なりのこだわりを話すことは少なかったのですが、今では対話や議論をする機会も増えています。

それから、ポートレートを撮る時に、正面からその人と向き合い、その人なりの魅力に気付くことに、幸せを感じるようになっていきました。

「100人カイギ」という形式は全20回で終了ですが、これからはもっと好きなように楽しんでいこうと思っています。

近いうちに新たな企画を公開する予定です。それまでもう少しだけお待ちください。また同じ町田で楽しみましょうね。


会場に集まったゲストに冊子形式で共有されていた町田市100人カイギのコンセプトブック地域のつながりを五段階に分けて表現している。

取材・文:木村洋平
画像提供:北村友宏