自然を回復させ、再生しようとする「ネイチャーポジティブ」が注目を集めています。
最近、日本では「ネイチャーポジティブ」がキーワードとして知られています。ネイチャーポジティブとは、失われた自然を回復させ、さらに再生させる取り組み・方針のことです。
ネイチャーポジティブとSDGsの関係
Googleトレンドで見ると、2023年頃から「ネイチャーポジティブ」という単語の検索数が上がってきた様子がわかります。日本ではこの2年くらいのトレンドです。
ちなみに「SDGs」という単語は日本では2021年から2022年にかけて検索数が伸びています。
「ネイチャーポジティブ」は「SDGs」の一部とも言えます。ネイチャーポジティブは「生物多様性」を守り、回復することで、SDGsでいうと「13 気候変動に具体的な対策を」「14 海の豊かさを守ろう」「15 陸の豊かさも守ろう」などを中心に、自然環境の全体を視野に入れています。
SDGsや持続可能性(サステナビリティ)の中でも今、特に注目されているのは「気候変動」と「生物多様性」です。
では、なぜ「ネイチャーポジティブ」への注目が高まっているのでしょうか。
自然の豊かさを回復する経営や政策へ
以前から「地球上の自然環境がこわされている」ということは言われてきましたが、それが今ある生活や産業にとってとても危機的であることを世界のリーダーたちがはっきりと認識したため、「ネイチャーポジティブ」を経営や政策に取り入れようという動きが高まりました。
WWF(世界自然保護基金)は、1970年から2020年にかけて世界中の野生生物や生態系の状態が70%以上、悪化したと報告しています。(生きている地球レポート2024より。)
こういった報告を受け、世界経済フォーラムではあ自然と経済にかかわる報告が続き、このままでは自然環境が回復できなくなるだろうこと、私たちの経済活動も自然の豊かさや生態系をよりどころにして成り立っていることが認められ、共有されました。
そこで、国連、投資家、企業、大学など多くの人や組織が協力して自然を守り、回復させようという動きが高まりました。
* 世界経済フォーラムについて、わかりやすいまとめはこちら(世界情報通信事情:総務省)、
また、ネイチャーポジティブについてまとまった資料(PDF)はこちら(環境省)です。
まとめ
「ネイチャーポジティブ」は関わる範囲が広いです。生態系の保全や回復だけでなく、気候変動もサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の推進も関係します。ですから、社会全体で向かっていくべき課題です。
その点、メディアとしてエシカルSTORYであつかうのが遅すぎたという気持ちが筆者にあります。
文:木村洋平
参考
『ネイチャー資本主義 環境問題を克服する資本主義の到来』夫馬賢治, PHP研究所, 2022
『ESGとTNFD時代のイチから分かる 生物多様性・ネイチャーポジティブ経営』藤田香, 日経BP, 2023