沼津市のサバ節工場をDIYで生まれ変わらせた「循環ワークス」は、地域のコミュニティです。ここを起点にモノ、ヒト、コトの循環が生まれています。
静岡県沼津市ではじまった「循環ワークス」。ここは、名前の通り「循環」をテーマにした地域のコミュニティスペースです。
循環ワークスの中を歩く
広々とした循環ワークスは、環境に負荷をかけず、モノ、ヒト、コトが循環する場所になっています。まるでエシカルな生活と仕事を作るための、壮大な実験場のようです。
屋上には太陽光パネルが置かれ、2020年、工場の準備を始めて以来、一度も、既存の電力会社と契約をせず、循環ワークス店内の電力は100%自家発電でまかなっています。暖房は、まきストーブ。外ではまき割りをします。回収された器や布製品は、修復や洗浄をした上で店内で販売されています。
小さなカフェコーナーもあり、オーガニック&フェアトレードのコーヒーやカレーを楽しめる日もあります。
工房・アトリエに当たる「製作室」では、民家の廃材や余った釘や部品を使って、手仕事のアップサイクルがおこなわれていました。
循環ワークスができるまで
循環ワークスの「工場長」である山本広気(やまもと ひろき)さんのご夫婦を中心に、地域の仲間が集まり、廃業したサバ節工場をDIYで再生しました。最初は足の踏み場もないくらい、ボロボロの廃工場で、残置物の撤去や清掃には、防塵マスクが必要なほどでした。高圧洗浄機で、燻された汚れと塗装を剥がし、再度ペンキを塗り、サバ節作りの工程で使われていたサバのプールは、工場内で壊したコンクリートガラを再利用し埋めて駐車場にするなど。プロの力を借りながらも、のべ500人のサポーターの手により、DIYの範疇を超えた大掛かりなリノベーション作業を地道に積み重ねた末、約1年の歳月を経てオープンしました。
工場長 山本広気さんの思い
もともと電気関係の仕事をしていた山本広気さんは、20代の頃、長く旅をして南米や東南アジアなど、広く世界をめぐりました。その後、東日本大震災をきっかけに、モノやサービスにあふれていても深く豊かさを感じられない生き方や、暮らしのあり方を問い直すことを決意。生まれ育った沼津市の港に近い工場を再生して、循環ワークスの活動をはじめます。
山本さん「循環ワークスは、古物を売っていますが、それよりも地域でモノや情報が循環するギフト(贈り物)の輪を作ることを大事にしています。たとえば、この壁には一面、「〇〇が必要です」「✕✕を差し上げます」という貼り紙がされていて、地域の循環だけでも、たくさんのものがそろいます。お金もかかりません」
大切なのは、こういう場を使ってひとも行き交い、交流が生まれ、手仕事が生まれ、思いやりの輪が広がることだと山本工場長は語ります。
クラウドファンディングとこれから
2023年の12月から2024年の1月にかけて、循環ワークスではクラウドファンディングを実施しました。火災報知器やバリアフリートイレの設置のための資金集めでした。また、これをきっかけに循環ワークスの活動を知ったひとも多かったのではないかと思われます。
クラウドファンディングのページ(終了)
手をかけることと、ひとの輪を大切に進化を続ける循環ワークス。生き物が変化していくように、工場の中も日々、生まれ変わっていきそうです。
循環ワークス
静岡県沼津市我入道浜町308
HP:https://junkanworks.com/
Instagram:https://www.instagram.com/junkanworks/
文・写真:木村洋平
執筆協力:北沢未来(循環ワークス)