香害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。強い香りを嗅ぐことや化学物質によって健康被害が起きています。
今回は、「香害」の事例や引き起こされる症状、私たちが普段から気をつけられることについて解説します。みんなが快適に過ごせる環境を整えていけると良いですね。
香害とは
香害とは合成香料によって引き起こされる健康被害のことです。合成香料が含まれる製品には、香水、合成洗剤、柔軟剤、芳香剤、化粧品などさまざまあります。
とくに合成洗剤と柔軟剤による被害件数が多い傾向にあります。突然症状が出てくることもあるといわれているため、誰でも被害に悩まされる危険性があるのです。
日本では、2000年前後から、合成香料を使った洗剤や柔軟剤の販売が盛んになりました。
2010年頃から「香りが長持ちする」などと謳われた製品が多く販売されたこともあり、2008〜2013年頃に香りによって体調を崩したという報告が寄せられるようになったという経緯があります。
では、実際に香害で引き起こされる症状や、香害が起こるシチュエーションを具体的に確認してみましょう。
香害の症状
最も多く報告されている症状は頭痛や吐き気です。
ほかにも、めまいや関節症も引き起こすといわれてます。香害が原因で「化学物質過敏症」というごく少量の化学物質に反応してしまう疾患(アレルギーのような疾患)を引き起こすことも確認されています。
症状には個人差がありますが、中には仕事や学校を休まなければならないほど症状が重くなる人もいます。
どんな状況で香害は起こる?
ふだん生活している上ではあまり気になりませんが、私たちの身の回りには多くの「香り」があります。
身近なところだと近隣の家の洗濯から香ってくる柔軟剤の香りがあげられるでしょう。
学校や電車など公共施設での被害も多く報告されています。
たとえば、電車内の他の人の衣類の香りで気分が悪くなるため、電車を利用できない人もいるようです。生活に必要不可欠な公共施設や交通機関の香害は、日常生活の基盤にも影響を与えます。
また学校では、体育や部活動などで運動した後にみんなが使用する制汗スプレーで気分が悪くなるという話もあります。
さらには、給食当番が着る給食着からの強いニオイで気分が悪くなり、給食が食べられないという子供もいるようです。
化学物質過敏症を引き起こすマイクロカプセルとは
「マイクロカプセル」とは、合成香料をカプセルで包み込んだもので、化学物質過敏症などの健康被害を引き起こす原因物質の一つです。
摩擦や紫外線など、外部からの刺激によってカプセルの膜が破れ、中の香料が出てくる仕組みです。
近年では、香りが長く続く柔軟剤などに多く含まれています。膜が一度に破れないため、香りは長い時間をかけて拡散されるのです。
さらに、マイクロカプセルの膜はプラスチックでできています。柔軟剤の使用によってマイクロカプセルの8割が下水に流れるため、マイクロプラスチックによる環境汚染の懸念もなされています。
また、破れた膜は空気中に漂い、それを私たちが吸い込むことで起こる健康被害についても言及されることがあります。アメリカではすでにマイクロカプセルの使用が規制されています。
日本の香害に対する取り組み
日本でも、少しずつですが、香害に対して取り組みが始まっています。
たとえば、2019年より香害をなくす運動が広がり、香料自粛のポスターを貼ることやHPでの呼びかけなどの協力を自治体に要請する動きがありました。
行政としての香害への対策はあまり取られていませんが、2021年2月に文部科学大臣へ「香害」の質疑がありました。
香害による健康被害で学校に通えない子供がいるという事実を受けたもので、文部科学省は関係省庁と連携して香害への取り組みを進めると答えています。今後、政府としてのさらなる香害対策も期待できるかもしれません。
国や自治体の取り組み以外に、私たちが日常でできる対策もあります。次に個人ベースで取り組める対策についてご紹介します。
気にしてみよう。香害で苦しむ人のために私たちができること
香害の被害件数の割合のトップを占めるのは86%で柔軟剤、その次に多いのが73.7%で合成洗剤と洗濯洗剤に多いことがわかります。まずは、日々の洗濯洗剤から注意できると良いかもしれません。
*「香害をなくす連絡会」によって2019年12月下旬から2020年3月に行われ、約9000件の回答があったアンケート結果に基づく数値。
ぜひこの機会に「香害」という視点から、写真のような「無香料」や「無添加」の洗濯洗剤の使用も検討してみてください。
また、柔軟剤の使用はなるべく控え目にし、どうしても使用する場合には、「微香」や「無香」のものを選ぶようにしてみると強すぎる香りを抑えられます。
まとめ
生活に溢れるさまざまな香料から引き起こされる「香害」。一人一人が少しでも意識していけると、苦しむ人を減らせるかもしれません。
香料が含まれる製品を手に取った時に、「この香り必要かな?」と立ち止まって考えてみることからはじめてみてはいかがでしょうか。
文:飯田千聖
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