HSP(Highly Sensitive Person)とは?自分も周りも心地よく生きるには

繊細な感性や敏感さを持つ“HSP”。HSPの人もそうでない人も、心地よく過ごすためにはどのようにすればよいのでしょうか。

サンライズ 女性

あなたは日常生活を送るうえで、次のような悩みを抱えていませんか?

・相手の悲しい表情や声音で自分も悲しい気持ちになるなど、周りの人の気持ちに影響されやすい

・激しい音楽や工事などの騒音、ガヤガヤした人混みがどうしても苦手。

・短い時間でたくさんの作業をこなそうとするとパニックになる。


もしこうした特徴が当てはまるとしたら、あなたは“HSP”かもしれません。


HSPってどんな人?

一葉のクローバーを手に持った上半身のカットの女性

詳しい意味は知らなくても、“HSP”という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

HSPとは“Highly Sensitive Person”(=とても敏感な人)の略称です。

具体的な特徴は大きく分けて次の4つあります。


1.丁寧に深く情報を処理する

その場やそこにいる人の雰囲気など、さまざまな物事についての情報を丁寧に深く処理する。

2.過剰に刺激を受けやすい

肌触りや聞こえる音、光、匂いなど五感から受ける刺激や、相手の感情や周囲の環境の変化などの刺激に過敏に反応する。

3.感情の反応が強く、特に共感力が高い

周囲の人の感情を読み取って影響を受けたり、ドラマや小説などの作品にも深く感情移入したりする。

4.些細な刺激を察知する

他の人が気付かないような些細な音や光、匂いに気付き、反応する。


こういったHSPの気質を持つ人は、全人口の15~20%程度、つまり5人に一人の割合でいるとされています。


HSPという概念の広がり

HSP(とても敏感な人)という概念は、1990年代、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱したものです。

彼女自身もHSPであり、何百人もの他のHSPへのインタビューを重ね、HSPの概念を生み出しました。

アーロン博士の研究によって、HSPが持つ「敏感さ」は直すべき性格上の欠点ではなく、あくまで生まれ持った「特性」であることが明らかになったのです。

全体の中で少数派のHSPは、その特性を周囲に正しく理解されることが少なく、生きにくさを感じる方も多いようです。

しかし、この概念が提唱されたことで、HSPが自身に持つ否定的な見方を捉えなおしたり、周囲の人が理解したりするきっかけになりました。

日本国内でも、HSPについてこの数年から十年くらいの間に、本やテレビ等で取り上げられる機会が増えました。その特性が知られて、それを受け入れる土壌ができ始めています。


HSPが日常生活で困る場面

部屋の隅でうずくまる男性

HSPは生まれつき持っている敏感さによって、日常生活の中のどんな場面で困りごとが生じるのでしょうか。

例えば、職場や学校では次のような困りごとがあるかもしれません。


・周りの人の機嫌が悪いと、自分のせいかもしれないと思う。

・同僚や友達が上司や先生に怒られているのを見ると、自分も怒られているように感じ、つらい気持ちになる。


これらは、周囲の人の気持ちを丁寧に読み取ったり、共感したりするために感じるものです。すると気疲れを感じ、仕事や授業に集中できなくなるという問題も起こりえます。

また、飲み会やパーティーなど人が多く集まる非日常の場に行くと、その時は楽しくても、帰宅後はぐったりしてしまう、という方もいるでしょう。

HSPは、そこに集まるたくさんの人や慣れない環境から、数多くの情報を繊細に捉えます。結果、いつも以上に受ける刺激が多く、精神的に消耗してしまうのです。

ほかにも、映画の大きな音や、すれ違う人の香水の匂い、強い日差しなど五感に対する強い刺激に耐えられない、という場合もあります。

これ以外にも刺激を繊細に捉える性質のために、日常生活の中で過ごしにくいと感じる場面が数多くあるようです。


HSPがより快適に過ごすには?

それでは、HSPの特性を持つ人が生きやすくなるには、どのようにしたら良いのでしょうか。


1.自分の性質を客観的に捉える

もし自分の特性についてネガティブなイメージを持っている人であれば、まずはその性質を客観的に捉え直してみましょう。

非HSPの人に比べてできない部分を「短所」に感じ、そこにばかり目が行く人も多いと思います。

しかし、「敏感である」ということは単なる「性質」であり、長所にも短所にもなり得るものです。

2.HSPの特性についてよく理解する

自分の性質を客観的に捉えられたら、自分が持つHSPの特性についてよく理解しましょう。一口にHSPといっても、どの要素にどれくらい当てはまるかは人それぞれです。

自分にはどんな性質があり、どの性質が強いのか、また、それがどんな場面でどのように影響を与えているのかを考えてみましょう。アーロン博士のセルフテストを参考にすることもできます。

自分の特性を理解することで、それに応じた対策をとることが可能になります。

3.過ごしやすくなるための対策例

例えば、周りの人の感情を察知して影響を受けるなら、耳栓を使う、付箋やボードなどで視界を遮る、などの方法も考えられます。

たくさんの人が集まる場で精神的にぐったりしてしまうなら、早めに切り上げる、そういった機会を減らす、という対策ができるでしょう。

自分の性質と置かれている環境に応じて、過ごしやすくなるための方法を考えることができます。


自分も相手も尊重することで生きやすく

お互いの手でハートを作る4人の少女

HSPは、自分が持つ敏感さに振り回され、「なぜ自分は人と比べて、周りの人や環境を気にしすぎてしまうのだろう」と思ってきた人も多いかもしれません。

しかし、それは持って生まれた自分の特徴の一つ。

無理に直そうとするのではなく、その特徴を踏まえて「どのようにしたら過ごしやすくなるかな」と考え、できることに目を向けてみてください。

「自分はHSPの特徴に当てはまらない」という人は、「HSPはこんな特徴があり、こんなことで困りやすい」と把握しておきましょう。

家族や友人、同僚など、身近な人でHSPの傾向がある人がいる場合、それが分かっているだけでも助けになることができます。 

HSPに限らず、自分自身、そして相手を尊重し理解しようとする姿勢が、お互いに生きやすい環境づくりにつながっていくのではないでしょうか。


文:有馬里美


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