アニメで学ぶエシカル『銀の匙 Silver Spoon』──命と食べ物の物語

今回のテーマは「エシカル」×「アニメ」です。楽しみながら「命」と「食」にまつわるエシカルを体感できるアニメ作品『銀の匙 Silver Spoon』を紹介します。

アニメ『銀の匙』の公式画像。キービジュアル
アニメ『銀の匙』より
© Aniplex Inc.

おこもり生活の楽しみ方の一つとして、エシカルなアニメはいかがでしょうか?今回ご紹介するアニメ『銀の匙 Silver Spoon』は、北海道の農業高校を舞台にした「酪農青春グラフィティー」。フジテレビで2013年から2期、全22話で放送された作品です。原作は『鋼の錬金術師』でおなじみの荒川弘さんによる累計1700万部の大ヒット漫画で、今年2020年に全15巻で完結しました。


主人公は、札幌の都会から、北海道の田舎の大蝦夷農業高校(通称:エゾノ―)に進学した八軒勇悟(はちけん ゆうご)。酪農科学科に入学し、授業で農業に必要な知識を学びながら、寮生活を通じて農作業の実習を行います。クラスメイトは農家の後継ぎだらけという中、サラリーマン家庭で勉強一筋の日々を送ってきた八軒は、授業や寮生活を通じてさまざまなカルチャーショックを体験します。広大な敷地で迷子になったり、早朝に起きて動物たちのお世話や農作業などの重労働をしたり、気性が荒くプライドの高い動物との接し方に苦労したりします。視聴者はそんな主人公といっしょに、農業や動物たちとの触れ合いを追体験することができます。

農業実習で、八軒は世話を担当した子豚をペットのように可愛がり名前をつけます。体が小さいその子豚が無事成長するよう、栄養のある餌を与えるなど日々、工夫します。しかし、その豚はやがて食肉にされる運命なのです。ついに出荷の日となり、加工場へと運ばれる豚を見送る主人公。その結末と八軒の行動には、思わずほろりとさせられます。このエピソードは「出生、飼育、解体、加工、販売、消費」という、食肉ができるまでのライフサイクルを丁寧に描いた物語ともいえるでしょう。


本作品を視聴すると、1匹の豚、1羽の鶏が産んだ卵など、生まれた時から私たち人間の食べ物になる運命にある動物たちの命をいただくことで、私たちは生かされているということを実感できます。そして、これらの動物は酪農家が手をかけて育てるものです。自然が相手ですから、酪農家には休日や就業時間という概念はありません。まだ夜が明けぬ前に起きて動物の世話をしたり、繁忙期には幼い子供たちが手伝ったりする場面もあります。また、収入減や後継者不足に直面し、廃業せざるを得ないケースも出てきます。このような厳しい状況の中、酪農、農業は成り立っているのです。

農業にあまり馴染みのなかった筆者は、本アニメの視聴を通じて、「食べ物を得るとは」「動物を育てるとは」ということが身近に実感できて、「いただきます」の意味が理解できるようになりました。エシカルな食べ物といえば、途上国の生産者を支援するフェアトレード、無農薬食品、動物性食品を避けるヴィーガンなどは取り上げられやすいでしょう。しかし、私たちの多くがふだんスーパーで購入し、日々の食卓に並べる食べ物のルーツに思いを馳せ、その命の恵みに感謝することもまたエシカルではないでしょうか。

作品にリアルさが感じられるのは、原作者自身が北海道で酪農と畑作を営む農家に生まれ、実際に農業に従事し、農業高校に通った経験があるからだといえます。ストーリーには作者の体験や知識が反映されており、半ばノンフィクションの作品と言えるかもしれません。アニメの1期目では農業のイロハが中心の内容になっており、2期目では進路選択や人間関係なども見どころとなっています。併せて、原作漫画『銀の匙 Silver Spoon』(荒川弘, 少年サンデーコミックス, 小学館)もお手に取ってみてください。

とれたての牛乳、瓶に入っている

ほのぼのとした日常を描くアニメですが、テンポの良いコミカルな作風となっています。農業や学校生活以外にも友人、家族、恋愛、スポーツなどさまざまな青春の要素がバランスよく散りばめられています。なにより、本作品に登場する食べ物の美味しそうなこと!食に関心のある方にもおすすめです。年代問わず楽しめるため、ご家族などで視聴しても良いですね。命や食について学びながらも、爽やかなストーリーやキャラクターたち、大自然の風景に癒されること間違いありません。

文:Masumi
画像提供:Aniplex Inc.

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