コロナでこもちがちな日々、「どこかに旅行に行けたらいいのにな〜」と思う方も多いかもしれません。そこで、本で楽しむ「エシカルなおうち旅行」をおすすめします。
今回、取り上げるのは『絵本のようにめくる 世界遺産の物語 地球の記憶 編』です。見開きごとに素晴らしい写真が広がり、小さな解説が寄せられています。
各写真には見出しもついているので、いくつか引用してみましょう。
「フィヨルドが神の言葉を語る」ってどういうこと?
もしかして、ここは火星?
テーブルマウンテンの上には何があるの?
なぜ、フラミンゴの体はピンクなの?
サハラ砂漠の奥地はどんなところ?
……etc.
写真に付された「解説」もまた彩り豊かで、科学の話、歴史の知識、アニメの話題など、世界の風景がますます楽しくなります。
ちなみに、この本は「世界遺産の物語」と題されているわりに、半分以上は「世界遺産に登録されていない」風景を収録しているのも面白いところです。ちょっとマイナーな場所を知ることができるわけです。
「おうち旅行」は、これに似た本や良質な雑誌でも楽しめることと思います。たとえば、「絶景」を集めた本はいろいろと見かけますし、「京都や鎌倉の紅葉」ならば、いま特集している雑誌があるでしょう。あるいは「仏像特集」といったムック本で自分の好きな世界を旅するのもよさそうです。
「それで、どこがエシカルなの?」
と思われたかもしれません。
ひとつは「カーボン・フットプリント」です。本を1冊作って流通させて買うのは、飛行機や車で現地へ行くより、温室効果ガスを出さないでしょう。そして、家やカフェ、お気に入りの場所で静かに本をめくり、よい風景に浸るのも十分、素敵な時間の過ごし方です。
もうひとつは、こちらの方が大切なことだと筆者は思うのですが、この『世界遺産の物語』を読み終えると「自然への畏敬」の気持ちがわきます。
「ああ、大自然や地球って人間がちっぽけに思えるくらい、偉大なものだな」と思えます。写真ごとの解説でも触れられている、「氷河」「北極圏に暮らすサーミ人」「セレンゲティのムーの群れ」「アメリカの先住民が管理している岩と渓谷」といった世界は、気候変動や先住民への敬意のなさ、といったことによって今後、失われるかもしれないのです。
もちろん、これらを守るのが「エシカル」であり、「サステナビリティ」(持続可能性)です。
しかし、もし私たちのエシカルやサステナビリティが視野の狭いものとなり、「ひとの生存」や「人類の生き残り」だけを大切にしてしまうとすれば危うい、と感じます。氷河や先住民の生活はすべて失われても、「うまいシステム」を作り上げて人類は生存できるかもしれないからです。けれど、それは本当に「エシカル(倫理的)」でしょうか?
「私たちは人類である前に、地球の名もなき一員なのかもしれない」と、そんな風に考えるきっかけをくれる1冊でした。
文・写真:木村洋平
『絵本のようにめくる 世界遺産の物語 地球の記憶 編』監修 村山秀太郎, 本田陽子, 昭文社, 2020
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