コロナのなか「オンラインの児童館」を立ち上げて子供に安心を届ける(吉井夏美さん)

新型コロナウイルス感染症が広がった状況を受けて、オンラインの児童館を立ち上げた若き起業家、吉井夏美さんにお話を伺いました。吉井さんの原点にあったのは、「子供たちの安全と安心を守りたい」というエシカルな思い。もともと児童館で働いていた経験を活かして「#オンライン児童館」の活動を始めました。

吉井夏美さん
吉井夏美さん

取材日:2020年4月29日

木村(インタビュアー):──コロナが広まった状況を受けて「#オンライン児童館」の活動を始められたのですね。

吉井夏美さん:はい。今年の初めに起業しようと思った時は、「子供たちのマネーリテラシー向上を支援する」ための起業案を考えていました。でも、いまは「#オンライン児童館」に挑戦しています。

──「#オンライン児童館」の前に、そもそも「児童館」とはなにかを伺ってもよいですか。

児童館は子供が通い、遊べる施設です。子供たちが心身ともに健康に育つことを目的に運営されます。公営と民営の両方があります。私は公務員として児童館で働いていた時期があります。

いまは子供たちがまちのなかのどこでも遊べる時代ではないので、児童館へのニーズも増えたり、多様化しているかもしれません。私の勤め先では子供のケアだけでなく、お母さん同士がつながるためのプログラムもありましたよ。また、情報共有を通してローカルなコミュニティを作ろうと試みてもいました。

──公務員を辞められた理由を伺ってもよいですか。

このまま勤めていたら、私が本来やりたかった「虐待予防」に関われない、と感じたからです。どうしても公務員だと人事次第で職務が変わってしまうので……。

私は幼少期に虐待を受けた経験があって、高校生の頃から生きづらさを自覚し始めました。その後、保育士の資格を取り、児童厚生員として就職しました。その勤め先が市営の「子どもセンター」でした。そこで乳幼児親子向けの事業を担当していたのですが、あるとき研修で、幼少期の愛着形成について講義を聞きました。その時、「幼少期の愛着形成をしっかり作る」ことを仕事の基礎にしたいと思いました。それで起業を考え始め、「子どもセンター」での仕事を辞めたんです。

──その後、起業案を練っている間に新型コロナウイルスの感染症が広がり、「#オンライン児童館」を始められたのですね。

はい。とはいえ、いまはオンライン児童館の事業を無料でやっています。私一人だと週1回、1,2時間なら続けられるという手応えです。親子で参加してもらっていますが、1回に5,6組の方が参加されることが多いです。4月は6回、開催しました。ZOOMを使いますが、リアルタイムで双方向のやりとりができるのはいいですよ。

──どんなことをするのですか。

子供のための手遊び、ベビーマッサージ、お母さんのためのトーク会を開いています。

手遊びだと、「むすんでひらいて」をいっしょにやったり。この時、絵本を使うと著作権に引っかかりそうなので、教材は自作しています。いまの季節なら、こいのぼりの絵を(ZOOMの)画面に出して「やねよりたかい こいのぼり」をいっしょに歌う感じですね。

──ベビーマッサージというのはなんでしょう。

赤ちゃんの体を撫でたりさすったりするものです。私は「わらべうたベビーマッサージ」を画面越しに教えて、いっしょにやります。もともと私もベビーマッサージは(ZOOMではなく)リアルでも、じかにはできないんです。マッサージのための資格をもっていないので……。だから、人形を使って画面越しにやり方を教えます。向こうで親御さんが歌に合わせてマッサージします。

──どんな歌を歌うのですか。日本の民謡でしょうか。

いえ、みんなが知っているような歌ではなくて、ベビーマッサージ用の歌があるんです。「おなか」「せなか」といった触る箇所にあわせた歌詞のある歌で、歌詞は画面に出します。

わらべうたベビーマッサージを教えるための人形を抱く吉井さん

──お母さんのためのトーク会は、「ZOOMお茶会」でしょうか。

はい。親御さんが4組くらい、子供をケアしながら1時間以上ずっとお話ししているような感じです。持ち物は各自、自分の飲み物。みんなが不安になりがちななか、お母さん同士が話すことで安心感が湧くといいなと思っています。

──どんな風に「#オンライン児童館」の活動を広めているのですか。

Facebookで告知をしていたら、口コミで広がりました。あとは、LINEのオープンチャットを使っています。Facebookだと実名になるので、ハードルが上がるひともいるからです。そうやってオンラインでしかつながらないひとたちが集まるのはいいなと思いました。神戸や福岡、岐阜など全国から来てくれています。

それから最近は、児童福祉にかかわるNPOやママさんサークルから、サービスをシェアしてよいか、という声をいただいています。

──潜在的なニーズがまだまだありそうですね。

私が取ったアンケートによると、「ほっとしたい」「つながりたい」「気分転換をしたい」といった声が多いです。そうですね、お母さんが人と話したい、子供にテレビを見せておくだけじゃしんどい、子育て中の親御さんとつながりたい、という思いで参加されるかたが多いのかなって思います。

これからも、お母さんたちが安心できる場を作りたいです。講師を私がやらなくてもよいと思うので、プラットフォームとしての「#オンライン児童館」でもいいと考えています。

Facebookページ:#オンライン児童館
Twitter:#オンライン児童館 吉井夏美


【イベントお知らせ】bitsオンライン夏祭り2020(* 終了しています)
日時:8月16日(日)12:45 – 21:30
場所:ZOOM
対象:親子(保育士さんや子育てにかかわる方もどうぞ!)
参加費:500円〜(オプションあり)
詳細 & お申込はこちら


吉井夏美さんがこの「#オンライン児童館」の試みに至るまでには紆余曲折がありました。最初は子供たちのマネーリテラシーの向上を目標に、ボードゲームの開発を考えていました。その後も迷いを抱えながら、ここにたどり着いたようです。しかし、具体的な起業案には揺れがあっても、「子供たちの安全と安心を守りたい」というエシカルな思いがずっと変わらないからこそ道を拓かれたのだと、取材を通して感じました。

文・写真:木村洋平