エコでサステナブルな「砂電池」が動き始めた

フィンランドで「砂電池」が稼働し始めました。「砂電池」は砂でできており、発電した熱エネルギーをたくわえられます。

フィンランドで、世界最大の「砂電池」(すなでんち Sand Battery)が稼働し始めました。電池の中は砂でできており、600度やそれを超える温度で保たれます。「砂電池」は地域の暖房を支える役割を担うほか、発電所とつながる「蓄電池」(ちくでんち)にもなります。


フィンランドのスタートアップ企業が実現

今回の砂電池はフィンランドのポルナイネンという町で、地域暖房ネットワークにつなげられます。砂電池は、地域暖房ネットワークから年間でCO2(換算)の排出量を約160トン削減します。これにより、温室効果ガスの約70%が削減されると見込まれています。フィンランドのスタートアップ(起業された)企業であるポーラーナイトエネルギー社(Polar Night Energy)が2018年頃から実験し、成功させました。

2022年にフィンランドがNATOに加盟したことで、ロシアから天然ガスの供給を突然に止められた時にも、「砂電池」がよい意味で話題になりました。電力の自給自足に貢献するからです。


再生エネルギーと蓄電池は相性がよい

今、気候変動や汚染への対策として、世界的に化石燃料から再生エネルギーへの移行が進んでいます。再生エネルギーには、太陽光発電風力発電があります。しかし、化石燃料が発電量を一定に保ちやすいのに対して、太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーは出力が安定しません。太陽が当たる昼間や風の強い時に、発電が集中するからです。

参考:気候変動と温暖化の今を知る 10の記事

そのため、再生エネルギーで発電した電力を一回、巨大な蓄電池(ちくでんち)にたくわえて、市中や工場などに必要な分を出していく仕組みが必要とされます。その仕組みとして、砂電池が役立つのです。


砂電池はエコでクリーン

砂電池は、自然界にある砂や、産業で使われた材料を再利用して砂として使います。ですから、特殊な資源(しげん)を必要としません。たとえば、国際的に調達(ちょうたつ)がむずかしかったり、調達に倫理的な課題がつきまとう希少鉱物(レアアース)を使ったりしないからです。

そのため、砂電池の製造はエコでサステナブル(持続可能)であり、シンプルかつクリーンな電池になりえます。また、砂電池は物理的に見て安定性と耐久性にすぐれ、安価に作れると見込まれています。かんたんに言えば、「砂のかたまり」だからです。


まとめ

砂電池は、現在フィンランドで実用化されて稼働しているほか、オーストラリアでも開発が進んでいます。世界的に、今後の普及が期待されます。日本でも再生エネルギーの開発、普及とセットで砂電池を使うことを検討できるかもしれません。

《参照記事》

世界最大の「砂」電池が稼働開始(dメニュー)
Sand Battery (Polar Night Energy)
Australia’s New Sand Battery Stores Solar Power for Days – Even Without Sunshine!(Princeea)
World’s Largest Sand Battery Now in Operation(Polar Night Energy)
Sand Batteries could transform clean energy(Ecobatt)


文:木村洋平

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