新たな埋葬の選択肢「循環葬® RETURN TO NATURE」で最期について考える

循環葬は、遺骨を森に埋葬する新しい埋葬の方法です。「循環葬® RETURN TO NATURE」の千葉県南房総市で行われた内覧会に参加しました。

at FOREST株式会社が提供する埋葬サービス「循環葬® RETURN TO NATURE」が関東拠点をオープンしました。場所は千葉県南房総市の真野寺(まのじ)です。この記事は、8月2日に行われた内覧会のレポートです。


循環葬とは

循環葬(じゅんかんそう)は、土壌学の専門家による監修のもと、遺骨をパウダー状にして、土と混ぜ、森に埋葬します。埋められた遺骨は微生物などにより豊かな森を育む栄養となります。

近年、注目されている新しい葬法には「樹木葬」という、墓石の代わりに樹木を墓標(ぼひょう)として埋葬する葬法もありますが、循環葬では墓標は立てません。森全体がお参りの場所になり、お墓参りは森林浴などを楽しむ時間になります。

また、循環葬は森林保全にもつながるとされています。整備前には植生調査が行われ、持続的なエコシステムで自然を循環するよう、森林の専門家の知見をもとに100〜200年という長期的な計画が立てられています。費用の一部は、森林保全や森林保全団体への寄付に使われます。

他にも、お墓の管理を継ぐ後継者が不要であること、墓じまいが不要であること、ペットといっしょに埋葬できることなども特徴です。


レセプション当日の様子

森の入口にある循環葬の看板

内覧会の会場である千葉県南房総市の真野寺は、1300年の歴史を持つ真言宗のお寺です。大阪府豊能郡能勢町の能勢妙見山に次ぐ二拠点目であり、8月11日からオープンしています。

ポタラの森にはさまざまな草木が生えています

循環葬を提供する森は「ポタラの森」と呼ばれています。ポタラとは、「観音菩薩の住む補陀落(ふだらく)浄土」を意味するチベット語です。足を踏み入れると澄んだ空気と小鳥のさえずりが聞こえてきました。

森の中の森林浴デッキ

森の中には、デッキがありました。契約後はいつでも好きな時に来て、森林浴が楽しめるとのこと。このデッキからは、埋葬される場所を眺められます。実際に座ってみると、真夏でしたがどこか涼しく、木漏れ日が美しく感じました。

サンプルの遺骨を使った実演もありました

埋葬の方法についての説明もありました。土と同じくらいの粒度にした遺骨を、まず土と混ぜ合わせ、そのあとに森へ埋めます。ご家族は、土を混ぜる段階から参加し、故人を自らの手で森に還すことができます。

埋葬場所は、少し開けた場所でした。時間によっては日の当たるところもあります。循環葬ではペットとの合葬も可能で、エリア分けされていました。

遺骨の主成分はリン酸カルシウムで、これは土壌の肥料としても使われています。しかし土壌に多く入れすぎると土壌のバランスが崩れてしまうため、森林への影響を考えて埋葬場所や埋葬数を調整しているそうです。

真野寺には1300年の歴史があります

真野寺は大きな森を持つお寺ですが、森すべてを管理し続けることは難しく、いのししなどによる獣害の被害が広がっていました。しかし循環葬により人の出入りが増えることで駆除することなく獣害を減らせますし、森の復活や生態系の維持などが可能になります。

説明の中で、真野寺の伊藤尚徳住職の「循環葬は未来を見ている考え方」だという言葉が、印象的でした。


お墓の問題とこれからの埋葬

団塊の世代が高齢になり、亡くなる人の数が急増する「多死社会」に突入している日本では、都市部を中心に墓不足という問題がすでに起きています。たとえば、都立霊園では、毎年霊園ごとに抽選が行われています。

また、後継者がおらず、放置された「無縁墓」の増加も問題です。無縁墓は適切な管理や供養がされず、荒廃したまま長期間放置されることになります。

このような問題を発生させないための方法として、循環葬は選択肢の一つになり得るでしょう。

また海外では、化学反応を利用して水中で遺体を分解する「水火葬」や遺体を堆肥(たいひ)にする「コンポスト葬」なども注目されています。今後、日本で導入される可能性もあります。


まとめ

遺骨を植物を育てる栄養素として、自然循環の輪の中に取り込む「循環葬® RETURN TO NATURE」。樹木葬や散骨などの跡を残さない葬法の一つとして注目されています。

「自分の理想の終い方は何だろう」そう考えたとき、残された人への負担が少なく自然の一部となれる循環葬はエシカルでよいなと筆者は思います。

この記事をきっかけに、自分自身や大切な人の最期について、考えるきっかけになれば嬉しいです。

参考:PR TIMES「循環葬®︎RETURN TO NATURE、関東初となる千葉拠点にて内覧会を開催」


文・写真:古賀瞳