今回ご紹介する「薬膳(やくぜん)」の知恵は、長い年月をかけてつちかわれてきた食の知恵であり、伝統文化を大切にするエシカルです。
まだまだ厳しい寒さが続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。寒い時、マフラーやダウンなどの防寒着でもしのぐかと思いますが、日々の食事から体を温めることもできます。
「薬膳(やくぜん)」は、長い年月をかけて培われてきた食の叡智(えいち)であり、伝統文化を大切にするエシカルです。
今回は、活力のある一日を過ごすために、朝の約20分で朝食をとりつつ昼食が作れる、忙しい人にもお試しいただける和食の薬膳レシピをご紹介します。
「薬膳」とは? 薬膳がなぜエシカルなのか
薬膳の「膳」は食事を意味します。
東洋医学の一つである中医学(中国伝統医学)理論に基づき、その季節や人の体質に合わせて食材を組み合わせた料理のことで、健康維持や体質改善、病気予防や治療、体の不調などを改善していくことを目指します。
その歴史は今から3000年ほど前、中国で誕生してから長い年月を経て確立されました。それが日本にも伝わって、日本人にとっても馴染み深いものとなっています。たとえば、お刺身にワサビや生姜を添えたり、豆腐にネギや生姜をのせる文化も、薬膳の知恵です。
長い年月を経て培われてきた文化や伝統を取り入れることで、生活が豊かになり、エシカルライフとなります。
(1)日本の伝統食を朝食に
朝食では、日本の伝統食である「味噌汁」を取り入れるようにすると、内から体を温めてくれるだけでなく、日中の集中力が高まり、夜の睡眠の質も上がりやすいです。けれど、「味噌汁を作るとなると、出汁をとって煮立たせて……」と面倒なイメージがある方も多いかもしれません。実は案外、簡単に作ることもできます。
もし、食欲がなければ味噌汁だけの朝食でも良いですし、炊いたご飯と合わせるだけで、素晴らしい和朝食になります。ここでは、お湯を沸かして混ぜるだけの簡単味噌汁をご紹介します。
~かんたん味噌汁のレシピ~
材料(一人分)
・味噌:大さじ1弱
・お湯:150cc~ ※味をみて濃さは調整して下さい
・鰹節(または昆布粉、煮干し粉など):小さじ1
・お好きな具材:少量(ネギ、乾燥ワカメなど)
作り方
①材料を準備します
ネギを使う場合は輪切りにし、生姜はすりおろすかみじん切り、乾燥ワカメはひとつまみほどの量をそのまま入れます。
②材料すべてをよく混ぜて溶かしたら完成です
<薬膳ポイント>
・冷えが強いときは、温性食材(体を温める作用)である生姜やネギをプラス
・むくみが気になるときは、体の余分な水分を出す作用のあるワカメや昆布をプラス
・今日は疲れたなと感じたときは、気をチャージする鰹節や煮干しをプラス
* 味噌を選ぶポイント:「天然醸造」と表示があるものや、「大豆、米、麦、塩、麹」以外の表示がないものは、おすすめです。それらはしっかり熟成・発酵されているので、腸内環境の改善につながると言われており、伝統継承の面からも勧められます。
筆者もよく使うおススメの味噌
ひかり味噌……こだわりの原材料でできており、スーパーでも買いやすいものです。
いいちみそ……創業嘉永3年から続く木桶の伝統味噌です。
蔵元 桝塚味噌……天然醸造にこだわり、木桶で熟成された味噌
(2)昼食にエシカルな薬膳弁当を
朝食の味噌汁用のお湯を沸かしている間に、フライパン一つで作れるかんたんな薬膳弁当をご紹介します。
ちなみに、健康のためにサラダを食べる方は多いかと思いますが、生野菜は体を冷やしやすいため、寒いときに多くとるのは控えたほうがよいです。野菜は蒸したり焼くなどして、加熱してから食べるようにすると、体が冷えにくくなります。
~温野菜とお魚のちゃんちゃん焼き弁当~
材料(一人分)
・キャベツ
・しめじ
・カブ
・人参
・玉ねぎ
* 冷蔵庫に残っている野菜やお好きな野菜でも大丈夫ですが、白菜やモヤシなど水分の多い野菜はお弁当には避けたほうがよいです。
・MSC認証などのお魚
・塩コショウ:少々
・油
~★A~
・味噌:大さじ1
・砂糖:小さじ1
・みりん:小さじ2
・酒:大さじ1
・醤油:ほんの少し
・生姜すりおろし:少量
作り方
①野菜を食べやすい大きさにざく切りする
②お魚の水気を拭いて、塩コショウを軽くふる
③フライパンに油をしいて、お魚の皮目を下にして中火で焼く
④火の通しにくい蓮根などの根菜類は、お魚の空いたスペースで一緒に焼き始める
⑤焼き色がついて裏返したら、残りの野菜を上に加える
⑥★Aを全て混ぜ合わせて、回し入れる
⑦蓋をして1~2分ほど蒸し焼きにして完成
お好みで分量外のバターやブラックペッパーを入れてもOKです。
冷蔵庫の中身と相談して、この日はキャベツと人参、椎茸、玉ねぎ、菜の花が入ったちゃんちゃん焼きとなりました。今はテレワークなので、弁当箱には入れずにいただきます。
<薬膳ポイント>
・冷え性や風邪を引きやすい方は、気力を高める鮭やサワラをチョイス
・胃腸が弱っている方は、消化が良く胃腸を労わるタラや鯛をチョイス
・イライラしたりストレスが溜まっている方は、気を巡らす作用のある春菊や三つ葉をプラス
筆者は、買えるときは有機野菜やMSC認証などの魚介類を選びますが、毎日それが叶うわけではないので、野菜なら旬のものを、魚介類なら天然のものを選んだりもします。
エシカルに正解はないので、ご自身のこだわりたい部分を優先してみてくださいね。
体を内側から整える
この寒い時期におすすめのエシカルな食事を薬膳の視点でご紹介しましたが、体を温めるためにはもちろん食事だけでなく、軽い運動やストレッチなどで筋肉量を増やしたり体内の巡りを良くすることもとても大切です。
季節や自分の体調に合わせた食事をとれるようになると、体の内側から変わっていくのが実感できるかと思います。
また、自分の目で見て調理すると、素材となる食べ物や、それを育む地球環境への感謝の気持ちが生まれてくるので、エシカル消費にもつながるでしょう。
どうぞ、みなさまが快適に暖かい季節を迎えられますように!
文/写真:尾畑珠美
尾畑 珠美 ライター / 薬膳ライフスタイリスト
薬膳ライフスタイリスト。会社員時代に体調を崩したことをきっかけに、食や自然との関わりの大切さに気付く。環境教育やサステナブルを推進するオフィスと、自然食品店での経験を経て、現在は薬膳を主軸にした情報を発信中。
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