──佐藤さんにとっての「サステナビリティ」は人生を問う哲学のようですね。
他方で、リアルな企業活動の悩みを聞く場面もあります。
CSR(企業の社会的責任。CSR部門は社会貢献活動をすることが多い), CSV, SDGsというとクリーンなイメージがありますが内情は綺麗ごとでは片付けられないところもあって……。
以前、「CSRはつらいよ」というお悩み共有イベントを開きました。
こちらのnoteにその時のことをまとめています。「人生泣き笑い 〜あの『CSRはつらいよ』は、こうして企てられた〜」 。こんな風にCSRやSDGsの担当者は苦しんでいます。
なぜ、日本でCSRやSDGsはいまいち広がらないのか。「サステナビリティ」と言っても、みんな表層を撫でようとしてしまう。
「なぜ?」私たちはそれを問いかけ続けます。
──日本において、これまでとこれからで「サステナビリティ」をめぐって潮目が変わった印象はございますか。
そうですね、潮目は変わってきています。SNSやスマホの普及でクリエイティブが一般化しました。
みんな「どう見せるか」をすごく工夫している。インフォグラフィックや動画など、手法も多様になってきています。そういう流れが昨年あたりから加速している実感があります。
あと2,3年でサステナビリティやエシカルのシーンが変わっていくのじゃないかと思いますね。
──それはさきほどおっしゃっていた、見せ方を工夫できる若手への期待があるということでしょうか。
はい。
RIDEは次世代を応援していきたいです。力を貸すということで、ほんとは私たちが前に出る気はないのです。……こうして、インタビューに出ていますが(笑)。
これからの未来を担っていく当事者に任せたいんですよ。
そのために必要な部分をVOTEで補充してあげたい。たとえば、ちがう分野のアクティビストをお互いにつなげたり。クリエイティブな要素は私たちが担保したり。
SDGsの17番目の項目は「みんなでやろう」(「パートナーシップで目標を達成しよう」)なのに、実際には「みんなで」がなかなかできない。
それを支援する共創プラットフォームはすでにいくつかありますが、うまくはたらかせるのに困難は多々あるようです。
そんななか、「正しさ」を押し付けないで支援しよう、自分たちはできるかぎり透明な存在であり続けたいとRIDEは思っています。
──最後のパートです。“THE VOTE” はどういうプロジェクトですか。
あえてひとことでいうと、「ワイシャツというプロダクトをハブとした社会課題解決のための共創プラットフォーム」。
ワイシャツのQRコードからログインするオンラインスペースで、行政・企業・団体・個人の垣根を超えた共創を行います。
ほかのプラットフォームとちがうのは、「Break Off The Edge(ブレイク・オフ・ザ・エッジ)」という思想を前面に出しているところです。
VOTEは、個人の価値観を変革することで、社会課題を根本から解決したいのです。
私たちは、あらゆる社会課題の原因となっているのは、個人の価値観だと考えています。
ひとりひとりが視野を広げるだけで、今この瞬間にも世界は変えられると信じているので、その想いをクリエイティブの力を通してより多くの人に届ける施策を考えています。
──これは現時点で詳細が未公開のプロジェクトですよね。今回、事前に資料をいただきましたが、いまひとつわからないところがあります。ここの図なのですが(* 各アクターの関係図)。
システムはまだ開発中ですが、VOTEの一般ユーザー・企業・行政・市民団体・アクティビストたちが自由に社会課題に対して議論できる場を作ります。
たとえば、企業が新しいサービスを発案して、そこに意見が集まり、具体化ができるといった仕組みを想定しています。
そこで、SDGsに取り組みたいけど企画に苦労している企業と、資金はないけれどアイデアのあるアクティビストたちがつながる、など。
もう一点、一般のひとにもユーザーとして参加してもらうのはVOTEの特徴ですね。
このようにアクティビストや市民団体を中心に据えたプラットフォームはまだないと思いますので、彼らを企業や行政とつなぐメリットはあるでしょう。
さらに一般ユーザーの意見も得られるというのは、企業・行政にとってメリットになるのではないでしょうか。
このなかでチームやコミュニティが生まれ、RIDEが下支えとなってイベントの企画、商品開発、クリエイティブによる見せ方の工夫などの役割を担っていきます。
そのハブとなるアイテムにQRコードのついたワイシャツですが、これは商品開発の第一号です。
──VOTEの立ち上げまでには時間がかかりましたか。
2018年の末からプロジェクトがスタートしました。
ここに至るまでに多くのひとの助力、労力がかかっています。
プロダクトを作る過程で、そこにかかる途方もない時間や資源を目の当たりにし、ものづくりの現場への敬意とともに、ものを生み出し使うことへの責任を改めて実感しました。
──RIDEさんにとってもまったく新しい試みなのですね。今後、どうなるのかが楽しみです。最後に読者へのメッセージをお願いします。
ぜひVOTEでいっしょに活動しましょう。
誰でも参加できるので、みなさんひとりひとりと話がしたいな、って思っています。
窮屈を感じながら暮らしている方がいたら、「ひとつの正しさは存在しないよ」と伝えたい。
そして、VOTEにかぎらず、RIDEで主催するイベントもいろいろありますので、どうぞ一度のぞいてみてください。
文:木村洋平
画像提供:RIDE MEDIA & DESIGN 株式会社