私たちが心身ともに元気に生きていくためには、何が必要でしょうか。今回は理学療法士の石田さんに、心身ともに健やかになれる「体のメンテナンス」について伺いました。
取材日:2020年4月30日
石田佑也(いしだ ゆうや)さんは整形外科に勤務するほか、アスリートのトレーナーとしても活躍。自らが編集長を務めるWebサイトでは主にシューフィッター(目的に合う靴を勧める)として記事を執筆しています。
このような「体」にかかわる多彩な仕事を貫く考え方を伺いました。
──木村(インタビュアー):アスリートのトレーナーというのはどういうお仕事ですか。
石田さん:まず、コーチや監督、またはアスリート本人からオファーが来ます。そこでトレーニングのメニューを組みます。私はこれを学生の頃からやっていて、もう10年くらい経つでしょうか。
昔は、トレーナーと言うと「テーピングを巻く」「マッサージをする」といったイメージがありましたが、この5年くらいで変わりました。
トレーナーたちは呼吸の仕方から栄養学、神経の生理学など、海外から入る情報を取り入れて仕事の範囲を広げています。私の場合は、とくに関節を細かく見るのが得意です。
──石田さんは多岐にわたるお仕事をされていますよね。
どの仕事をする時も常に考えていることがあります。
それは「みなさんに一日生活するなかのすべての1分1秒をベストコンディションで過ごしてほしい」ということ。競技中でも練習中でもデート中でも。
たとえ身体能力が100%発揮されていなくても、そのひとにとってのベストなコンディションをもっていてほしいですね。
──身体能力よりもコンディション、というところをくわしく聞けますか。
私は理学療法士ですから、できることは「体のメンテナンス」です。
しかし、それは競技や試合で最大のパフォーマンスを出すことだけでなく、むしろ一般のひとにとっては心身ともに元気に一日を過ごせることを大事にしたいと思っています。
たとえば朝、「体が重いな」という時がありませんか。
そこでセルフケアをするだけでもその重さは軽減するんですよ。でも、現代人はそれをしないで不調のまま一日を過ごしてしまうひとが多いのです。
このメンテナンスは「柔軟性や筋肉を鍛える」ということとは別です。
もちろん、筋肉をつけたいひとにはそういうトレーニングを勧めてもよいのですが、私はまず、その日一日を過ごしやすくすることを大事にしたいと考えています。
たとえば、整形外科の患者さんは体の不調や筋肉の緊張を治すために来ます。「このあと商談なんだけど」と言われることもあります。不調を緩和し、緊張をほぐしたいですよね。
私の言う「コンディショニング」はこの調整です。
だから広い意味では、音楽を聴く、ハーブティーを飲む、散歩をするといったことも含まれます。そのなかでも、体を動かすメンテナンスならば、私たちが正しく診られますよ、ということです。
──体を動かすメンテナンスというのは、かなり専門的なことですか。
いえ、そうでもないです。たとえば、日々歩くこともメンテナンスです。
時々、「歩いているだけでよいんですか」と聞かれますが、「歩いてほしいです!」と思っています(笑)。
そういう方から「走らなくてもよいんですか」と聞かれることもありますが、体への刺激を与えてメンテナンスをするためならどちらでもよいです。むしろ、「リフレッシュできるか」がポイントですね。
そのあたりは、もっとラフな感じで取り組んでもらえたらなと思っています。
──日常のなかで、自分でできることもあるのですね。
はい。ただ、現代人の日常生活には、体への刺激という点で足りないところが多くあります。
これはひとの基本的な動きの種類を示した表です。本来、しようと思えばできる動きにはこれだけの種類があります。
どうですか、日常のなかでこれらのうち、どれだけの運動をしているでしょうか。
──僕の場合、ほとんどが日常ではしない動きですね。
多くのひとはそうだと思います。
でも、子供はちがいます。子供はいろんな動きをするので、さまざまな仕方で筋肉に刺激が入り、そのおかげで体が柔軟に動くようになります。すると怪我をしにくくなるし、肩こりにもなりません。