「エシカルペイフォワード」のプロデューサーが語るフェアトレードの現在

「エシカル」に特化したリアルの店舗としては国内のパイオニアである「エシカルペイフォワード」(東京・日本橋)へ行き、店舗プロデューサーの稲葉哲治さんに話を伺ってきました。

エシカルペイフォワード プロデューサー/サーキュラーHR 編集長 稲葉哲治さん

エシカルペイフォワードは2016年4月に東京 日本橋に開店しました。以来、ファッションや生活用品をメインに扱っています。それらが「エシカル」であるポイントとして、開店当初は「途上国の方々に雇用を生み出す商品」が約半分を占めていたそうです。そこで取材者が「フェアトレードを大切にするショップだったということでしょうか」と尋ねると「そうではありません」と答えが返ってきました。なぜでしょうか。実は、ここには「フェアトレード」という言葉をめぐる理解のちがいがあります。

稲葉さんによれば、この数年で「フェアトレード」は、よりブラッシュアップされたエシカルな事業のあり方へと変容しています。「狭義のフェアトレード」は「先進国が国際協力の名のもとに途上国の人々に下請けとしての仕事をまかせ、適切な対価を払う」ものと言えます。しっかりと対価を払う分、販売価格は高くなるので買う側も「途上国の人々を支援しよう」という意識をもって購入します。これが「狭義のフェアトレード」をめぐる状況です。もう一つ、「広義のフェアトレード」も考えられます。それはシンプルに「公平な貿易」であり、「適正な取引をすること」です。

「その意味では、エシカルペイフォワードの商品はそもそもすべてが(広義の)フェアトレードと言えます。」

たしかに、それならばあえて「フェアトレード」と訴える意味はあまりありません。それでは、「狭義のフェアトレード」に代わりつつある新しいタイプのエシカルな事業とはどういうものでしょうか。

「たとえばデッドストックの生地を使い、スポーツウェアを作る事業があります(kelluna)。または、海洋プラスチックを『アップサイクル』(* 付加価値をつける再利用)してアクセサリを作る事業もあります(カエルデザインwithリハス)。これらは『狭義のフェアトレード』にとどまらないエシカルな事業です」

新しいタイプの事業では、途上国の人々が主体性をもち、先進国の側が主導するわけではありません。また、販売するブランドも商品の質そのもので勝負するため、「支援をするために買う」ことを促すわけでもないと言います。

「ただ、だからといって『狭義のフェアトレード』が重要でない、ということではありません。たしかにいま、途上国とともに生み出すエシカルな事業では、現地の人がアイデアを出し、事業の中核を担います。先進国の側はマーケティングや販売においてノウハウを提供する、といった形です。しかし、そもそもこうした状況を生み出せたのは、『狭義のフェアトレード』をはじめとする長年の活動によって、途上国の人々が技術を獲得し、長く仕事にたずさわる機会を得られたからだ、とも言えます。とくに女性が就労の機会をもてなかったケースは多くあります。いままでの支援の歴史もあるからこそ、新しいタイプの事業も誕生できたのではないかと思います。」

こうした変化を肌で感じてきた稲葉さんはエシカルペイフォワードの商品ラインナップを変えてきたそうです。さらに、稲葉さんはものづくりや小売に限定することなく、広い視野で「エシカル」という言葉を捉えています。たとえば、エシカルな「働き方」を考えることもできるし、セクシュアリティの多様性について考えることも「エシカル」だと言います。

「僕はプロボノ(* 専門的な知識やスキルを活かしたボランティア活動)としても働いています。また、ここエシカルペイフォワードで『エシカルフォーラム』等を開催して講演活動も重ねてきました。セクシュアリティや家族の形にしても本来、選択肢は広いのであって、そこから『選べる』『選ぶ』ことが大事だと発信しています。」

稲葉さんは今年「サーキュラーHR」の活動も始められました。「人材ロス」をなくすことを目指し、新しい時代の働き方と人事を構想しています。また個人アカウントの note Twitter でも積極的に発信を続けています。

稲葉哲治さんの構想する広がりと柔軟性をもった「エシカル」はどこへ行くのか。この先も楽しみにしています。

エシカルペイフォワード 店舗情報
住所:東京都中央区日本橋蛎殻町1-24-4 井川ビル2階
最寄駅:
東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅 出口3から徒歩3分
東京メトロ日比谷線「人形町」駅 A2出口から徒歩7分
東京メトロ東西線・日比谷線「茅場町」駅 4a出口から徒歩7分
営業日時:火・木 12:00-19:00 土 12:00-17:00
URL:https://ethical-payfoward.jp/

海洋プラスチックをアップサイクルしたアクセサリ

文:木村洋平
写真:稲葉さん提供(1枚目)/木村撮影(2枚目)